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タリバーンを孤立させれば報復につながる--“軍隊”を派遣していない日本だから可能な対話を

谷山博史|2021年9月2日11:20AM

アフガニスタンでは米軍の撤退方針が示されるや、「イスラム原理主義過激派」と呼ばれてきたタリバーンが攻勢を強め、8月15日には首都カブールを占領。親米政権は崩壊し、ガニ大統領は国外に逃避した。長年、現地の住民らと交流してきた日本国際ボランティアセンター(JVC)の元アフガニスタン駐在代表、谷山博史さんがこの事態を分析する。

20年続いた米国を中心とした「対テロ戦争」の結末がこの現状である。タリバーンの勢力拡大、短時日での主要都市とカブール攻略に驚く報道が多いが、アフガニスタンの実情を知っている人は米軍が撤退すればこうなることはある程度予想していたはずだ。

私が最後にアフガニスタンに駐在した2006年から08年にかけてが、アフガニスタン情勢のターニングポイントだった。07年の時点でタリバーンの影響力の強い地域は主要都市部を除いて全土の54%に及び、08年には72%にまで拡大していた(国際シンクタンクInternational Council on Security and Development=ICOSレポート)。

私はその時点で対テロ戦争はすでに失敗であり、対話による和平以外に解決策はないと新聞や雑誌で主張し続けた。アフガニスタン政府や国連とタリバーンの和平交渉が密かに行なわれていた時期だ。地方レベルで停戦協定が実現したり、タリバーンを招いたピース・ジルガ(和平評議会)が模索されたりしていた。

だが、米国が対話を拒否していたために、和平の機会は失われてしまった。その後のタリバーン勢力強大化に伴い、タリバーンにとっては対話のインセンティブはなくなり、内戦は泥沼化の状況に至る。

形勢が悪くなった挙句、米軍は5月から一方的に撤退を始めたのだ。アフガニスタンは見捨てられた。20年2月にトランプ大統領(当時)とタリバーンの間で合意が成立したが、そこにアフガニスタン政府は加わっていない。しかも合意は和平のためではなく、米軍撤退のためのものにすぎなかった。

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