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東京「日の丸・君が代」裁判5次訴訟、都と教員側双方の控訴棄却

永尾俊彦・ルポライター|2026年11月1日2:01PM

「本件各控訴をいずれも棄却する」

 9月25日、東京「君が代」裁判5次訴訟で、東京高裁の門田友昌裁判長は判決を読むと、開廷から約8秒で法廷を去った。

9月25日、東京高裁での判決後に裁判所前で結果を伝える原告、弁護士ら。(撮影/永尾俊彦)

 卒業式などでの「君が代」斉唱時の不起立で処分された教員・元教員の原告15人が東京都教育委員会に処分取り消しを求めたこの裁判で、一審の東京地裁は減給は取り消したが、戒告は取り消さず、原告・被告双方が控訴していた。2003年の起立斉唱を強制する「10・23通達」以降、処分された教職員は延べ484人に上る。

 判決は、戒告20件は一審同様に裁量権の逸脱・濫用と認めなかったが、特別支援学校教員の田中聡史さんが6~10回目の不起立で受けた減給5件と、別の教員の減給の計6件は「重きに失する」として一審の取り消しを維持した。

 憲法19条の思想・良心の自由違反の主張については、11年以降の一連の最高裁判決が示した「起立斉唱命令は一般的、客観的には慣例上の儀礼的所作を求めるもので、思想・良心の直接否定ではない。ただし、間接的制約ではあるので必要性・合理性がある限りで許容される」という枠組みを踏襲し、教育基本法16条の「不当な支配」にも当たらないとした。

 不服従を市民的権利と認めるILO/ユネスコ教職員勧告適用合同専門家委員会(CEART)など国際機関からの是正勧告については、判決は「人権保障の国際水準に適う判断をしなかった」(原告・弁護団声明)。

 都教委は不起立を重ねるごとに処分を重くし、懲戒解雇に至る「累積加重処分」システムをつくろうとしてきたと原告・弁護団は主張する。減給を取り消された田中さんは「部分勝訴ではあるが、不起立が5回でも10回でも減給処分は裁量権の逸脱・濫用だとの判決には価値がある」と述べた。

 他方、戒告処分の取り消しを認められなかった川村佐和さんは、「戒告は決して軽い処分ではありません。処分を理由に私は定年後の再任用も時間講師も不採用。都教委は処分への恐怖によって教員を従わせています。同調圧力で起立したくない生徒も起立せざるをえなくなっています」と語った。

黙殺された前川意見書

 門田裁判長は、全国の裁判官の人事・行政を統括する最高裁事務総局の要職を歴任してきた「司法官僚」エリートだ。

 原告側の澤藤統一郎弁護士は、「間接的制約」論は「人権に必要な厳格審査を避け、緩い基準で多数派に従わせる枠組み」と言う。

 原告側は前川喜平・元文部科学事務次官の意見書を提出し、同氏の証人申請をしたものの認められなかった。前川意見書も「間接的制約」論を「結論ありきの粗雑なもの」とする。その他、学習指導要領の「(国旗掲揚、国歌斉唱を)指導するものとする」という文言が教員自身の起立斉唱義務を意味しない。文科省が公立校にのみ「日の丸・君が代」を強制し、私立校にはしないのは法の下の平等に違反する。文科大臣告示にすぎない学習指導要領の強制は憲法体系の「下剋上」。これら重大な提起があったが、判決は黙殺した。

 上告に向け、澤藤弁護士は「最高裁が信仰を理由に剣道実技を拒否した生徒を救済した神戸高専事件を基に、人権論の根源から主張したい。また、権力を委ねられた国家が主権者に敬意を強制する矛盾や教育の自由、行政手続きや裁量についても国際人権法も交え、集大成としたい」と語った。

(『週刊金曜日』2026年10月9日号)

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