【タグ】いのちのとりで
〈いのちのとりで裁判 4訴訟が10月23日に判決〉雨宮処凛
雨宮処凛・『週刊金曜日』編集委員|2026年10月17日6:59PM

「食事も減らし、入浴も減らし、安い食品を買うことばかり考え、エアコンもつけず、結婚式や葬儀にもいけず、古い家電が壊れることに怯えて暮らしているんです」
9月29日、最高裁判所の法廷に阿部広美弁護士の声が響いた。この日行なわれたのは、生活保護引き下げ訴訟(=いのちのとりで裁判)だ。
と書くと、「あれ? 去年6月の最高裁での勝訴で終わったんじゃないの?」という人もいるだろう。大阪訴訟・愛知訴訟について引き下げが「違法」と認められた歴史的な判決。それをもってすべての裁判が終わり、謝罪・補償という展開になると私も思ってた。
なぜならこの訴訟と「きょうだい訴訟」と言われる優生保護法裁判(強制不妊手術を受けさせられた障害者らが国を訴えた裁判)では最高裁での原告勝訴からすぐに当時の大臣や首相が原告らに会って謝罪。3カ月後には旧優生保護法補償金等支給法が成立したからだ。
が、いのちのとりで裁判ではそうはなっていない。賠償額はあれこれ理由をつけて一方的に値引きされ、大臣などからの謝罪はいまだない。
そして裁判はまだ続いている。ということでこの日、高裁で原告が敗訴した秋田・兵庫・佐賀・熊本の4訴訟の口頭弁論が最高裁で開かれるとのことで、応援に駆けつけた。
多くの原告が法廷で思いを述べた。
40年やっていた居酒屋を頸椎を痛めてやめたという84歳の男性は、食費も光熱費も切り詰めエアコンを我慢し、昨年、熱中症で二度も救急搬送されたと言った。
ソフトウェア開発をしていたという男性は、脳出血の後遺症で働けなくなり、自殺も考えたことを語ってくれた。生活保護を利用する今は1日1食の日もあり、友人の葬儀にも参列できないと悔しい思いを語った。
猛暑の中、安い食材を探してスーパーを回るという88歳の男性は、「90歳近いのに綱渡りのような生活をするとは思いませんでした。私のような思いをする人を、二度と生まないでください」と語った。
1000人を超える全国の原告のうち、10年以上にわたる裁判で亡くなったのは実に278人。原告、弁護団はこの日、補償額の値引きや受給権の相続がないことへの疑問を呈し、さらに一歩踏み込んだ判決を求めた。判決は、10月23日。どうか注目してほしい。
(『週刊金曜日』2026年10月16日号)
※「デジタル金曜日」定期購読はこちらをクリック
【タグ】いのちのとりで







