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改正個人情報保護法案の罰則新設に識者ら懸念 「違憲規定だ」
臺宏士・本誌編集長|2026年8月7日3:49PM
政府が今国会での成立を目指す改正個人情報保護法案の罰則規定(※)を巡り、識者やメディア関係団体などから表現・報道の自由や内部告発への制約懸念が出ている。新設される180条は、誰もが対象で損害を加える目的で人を欺いて個人情報を取得した行為などに対し、2年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金を科す直罰規定。同法の個人情報データベース等を扱う個人情報取扱事業者への間接罰に比べて格段に対象が広く重い。

研究者やジャーナリストらでつくるメディア総合研究所(谷岡理香所長)は6月29日、「政治家らから見れば、報道や告発は『損害を加える目的だ』と映るうえ、罰則が威嚇や嫌がらせ、批判的な言論を封じる目的だけの『恫喝告訴』に悪用されるのは明らかだ。(略)罰則規定は適用除外もなく、直罰で親告罪でもない。そして捜査機関には配慮義務もない。政府から独立した個人情報保護委員会が所管しながら捜査の直接介入を許す罰則の新設は立法経緯を無視したもので、憲法上の権利を侵害する違憲立法である」として削除を求める声明を出した。
砂川浩慶・立教大学教授は取材に対し「処罰対象が幅広で、適用除外規定もないから拡大解釈される懸念がある。取得段階で処罰対象となるため威嚇効果もあり、調査報道への影響も大きい。高市早苗首相が総務相時に国会で答弁した、政治的公平と結びつけた『停波発言』のように放送法が政治家に都合良く解釈され、現場が萎縮して放送が控えられてきた歴史を振り返れば明らかだ」と指摘する。
山田健太・日本ペンクラブ副会長は6月25日の記者会見で「潜入取材などで記者が罰せられる可能性がある」と批判した。
政府は適用除外言及せず
こうした懸念に対し、政府側は反論。同24日の参院デジタル社会の形成及び人工知能の活用等に関する特別委員会で質疑があった。安野貴博・チームみらい党首は「内部告発や報道取材といった正当な活動までもが対象に入っているように見えかねない」とし、①会社の不正を疑う従業員が、目的を伏せて同僚から上司の個人情報を聞き取った。従業員は目的を伏せる形で人を欺き、かつ会社の不利益を図っていると判断されかねない②報道記者が悪質な商法を取材するために、消費者を装って業者に接触し、担当者の氏名であるとか手口を聞き出す、ということも対象に入りかねない――と例示。「正当な取材報道や公益目的の内部告発は、明確にこの罰則の対象外であると解釈してよいか」と質した。
これに対し、個人情報保護委員会の佐脇紀代志・事務局長は「内部告発や取材の活動、そういったものは正当な範囲で行なわれる。公益を図る目的と認められますから、今述べた目的要件のいずれにも該当せず、本罪の対象とはならない」と答弁した。この点について松本尚・デジタル担当相も5月15日の記者会見で「正当な取材活動が対象となるものではない」などと述べているが、両者とも適用除外には言及していない。
同法では個人情報取扱事業者の報道、学術、政治、宗教など憲法上の自由に配慮し、義務規定の適用を除外し、個人情報保護委員会による事業者への勧告や命令の権限行使も制限している。それでも政治家らによる「保護」を理由に都合の悪い個人情報隠しが進んだ。佐脇事務局長の答弁に沿った適用除外規定は欠かせない。
(『週刊金曜日』2026年7月10日号)
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