6月の米国・イランの戦闘終結をめぐる合意内容、両国ほか海外のメディアはどう報じたか
和田浩明・ジャーナリスト|2026年7月29日4:27PM
米国とイスラエルによる対イラン攻撃は、6月17日に米国のトランプ大統領、イランのペゼシュキアン大統領が戦闘終結や両国の対立点解消に向けた交渉の枠組みなどを定めた覚書に署名し、一つの節目を迎えた。戦闘は3500人を超えるとされる死者を生み、中東原油の主要供給路であるホルムズ海峡の封鎖で日本を含む世界の経済に大きな混乱を残した。

一連の動きを各国メディアはどう報道したか。俯瞰すると、覚書内容に批判的で交渉の見通しに懐疑的な論調が目立つ(以下、日付はすべて6月)。
まずは当事国から見てみよう。米国ではトランプ大統領に批判的な『ニューヨーク・タイムズ』(電子版)が21日付で「4カ月近い戦争で何が変わったか? 大した変化はないと専門家は指摘」との記事を掲載。トランプ氏や米国を戦闘に引き込んだイスラエルのネタニヤフ首相が強調してきた、イランのウラン濃縮やミサイル装備、代理勢力を通じた周辺国への干渉など主な脅威は残ると指摘した。
トランプ氏に近い「FOXニュース」も19日、保守系シンクタンク・ハドソン研究所の専門家を招き「合意は経済的混乱を収めるためにも必要。だが最終合意で対イラン制裁の解除が(精鋭軍事組織で今回の紛争への対応を主導した)革命防衛隊を利する可能性や、ホルムズ海峡の管理がどうなるか非常に心配している」との見方を紹介した。重要事項が詰められていないとの指摘だ。
一方のイラン。政府系の「メヘル通信」は18日付で英語論評を掲載した。覚書署名を「直接的対立から段階的で管理された緊張の管理への移行」と評価。同時に「核、(対イラン)制裁、地域問題などの核心的対立は解決されないままだ」と書き、前途は容易でないことも強調している。トランプ政権による軍事攻撃や制裁などの「圧力最大化政策」では目的達成は困難だとも述べ、米国側のさらなる強硬策をけん制した。
イスラエルでは批判も
イスラエルの媒体はどうか。主要英字ニュースサイトの「タイムズ・オブ・イスラエル」は創刊編集者のデビッド・ホロウィッツ氏の論評(24日付)で、今回の合意を、イランへの「融和政策」だと批判。英国などがナチス・ドイツに融和政策を採り第2次世界大戦開始やユダヤ人虐殺の引き金となったとされる歴史に触れ、「同盟国(イスラエル)の実存的脅威である敵に譲歩した」と指弾した。
リベラル系の『ハアレツ』(電子版)は21日の英語社説で、合意に「イスラエルが脇に追いやられ恐ろしいほどあいまいだ」と懸念を表明しつつ、戦闘停止は評価。ネタニヤフ首相陣営が隣国レバノンでイランと近い民兵組織ヒズボラとの戦闘を続け、「合意を破壊しようとしている」と批判もした。
今回の戦闘でイランの攻撃を受け報復したとされるアラブ首長国連邦(UAE)の英字紙『ザ・ナショナル』(電子版)は19日付社説で、合意は「正しい方向への慎重な一歩」だと支持。米国への賛否が割れた欧州の報道を見ると、米軍のイラン攻撃での基地使用を拒んだスペインでは主要紙『エル・パイス』が合意内容が広く報じられた段階の16日付社説で、戦闘停止は歓迎しつつ合意の実態は「危うい停戦の延長にすぎない」と分析。米国とイスラエルの攻撃を「傲慢な冒険主義でイランの人々や地域の安定、国際秩序に深刻な長期的影響を残した」と非難している。
(『週刊金曜日』2026年7月3日号)
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