2040年代までに原発建て替え最大5基、経産省が数値目標提示 「あの時の教訓と反省は」
佐藤和雄・「脱原発をめざす首長会議」事務局長|2026年7月1日7:45PM
「3・11」での東京電力福島第一原発事故から15年と3カ月――。廃炉作業はまだ見通しのつかないままだが、あの時の教訓と反省は、政府内ではすでに消え去ってしまったかのようだ。

経済産業省は6月5日、審議会「総合資源エネルギー調査会」の分科会として原子力政策を担当する「原子力小委員会」(委員長は黒﨑健・京都大学複合原子力科学研究所所長兼教授)を開催した。そこで「今後の原子力政策の方向性と行動指針」の改定案を提示し、原発の建て替えについて2040年代までに最大5基、50年代までに最大14基とする目標案を示した。福島第一原発の事故後、政府が具体的な建て替えの数値目標を示すのは初めてである。
昨年2月に閣議決定された第7次エネルギー基本計画(エネ基)では、3・11後のエネ基でずっと引き続いてきた「可能な限り原発依存度を低減する」との方針を大転換。「原発依存度を低減する」という言葉は消え、「再生可能エネルギーと原子力を共に最大限活用していくことが極めて重要となる」との方針を示したのだ。
今回の改定案は、エネ基で示された「最大限の活用」について具体的な姿を提示したものだ。
改定案は、原発の建て替えの必要性と重要性について①生成AI(人工知能)の普及拡大に伴うデータセンターや半導体工場などの増加により、電力需要が増加する可能性が高い②中東情勢の緊迫化といった地政学リスクが高まっている――との理由を挙げたうえで、「化石資源に乏しい我が国において、準国産エネルギーである原子力発電の重要性は高まってきている」と強調している。
そのうえで原発の60年運転を前提に2割程度の電力量をまかなうための必要な設備容量を試算し、建て替え基数は1基あたり120万キロワットの大型炉を基準に算出。その結果、40年代までに220万~550万キロワット(約2~5基)、50年代までに約1270万~1600万キロワット(約11~14基)の建て替えが必要と結論づけた。
使用済み燃料も未解決
しかし、これが実現するには数々の課題が残っている。改定案でも「既設炉及び次世代革新炉への投資を民間事業者が判断できる事業環境を整備するため、初期費用に係る資金調達負担の大きさや建設期間・回収期間の長期化、(中略)バックエンド事業の不確実性、許認可に係る不確実性」などが課題となっていることを認めている。
「バックエンド事業」とは一般に分かりにくい言葉だが、放射性廃棄物の処理処分や、原子力施設の廃止措置つまり廃炉を意味している。
6月5日の原子力小委員会でメンバーの松久保肇・原子力資料情報室共同代表兼事務局長は「差し迫った脱炭素とエネルギー安全保障を考えるのであれば、巨額のコストを必要とし、時間も20年近くかかる原発新設に時間と労力を費やしている場合ではないはずです」「再稼働を進めれば当然出てくる使用済み燃料をいったいどうするつもりなのか、という問題が返ってきます」などと述べ、改定案への反対を表明した。
経産省は6月10日夜から改定案のパブリックコメント(意見公募)を始めた。期限は7月9日まで。今年夏には関係閣僚会議で正式に決定しようとしている。
(『週刊金曜日』2026年6月26日号)
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