ヘイトスピーチ解消法施行10年、排外主義政策を推進する高市政権下でのレイシズムの実態
石橋学・『神奈川新聞』記者|2026年6月25日7:00PM
ヘイトスピーチ解消法が6月3日で施行10年を迎えた。同法は外国ルーツの人々を排斥する差別的言動は許されないと宣言、国や自治体に解消する責務を定めた。この国で初の反人種差別法としてスタートラインに立ったものの、レイシズムは拡大、悪質化している。

5月25日、「『包括的差別撤廃法』制定を求める議員連盟」が東京の衆議院第二議員会館で開いた集会では、理念法である解消法を抜本的に改正し、実効性のある人種差別撤廃法を定めるという、進むべき道筋が示された。基調講演でノンフィクションライターの安田浩一さんは「矛先が多様化している。在日コリアンへの差別はなくならず、ムスリムやクルド人が標的になっている」と指摘した。
集会では埼玉県南部に集住するクルド人を「ゴキブリ」呼ばわりするヘイト街宣の動画を上映。「ゴキブリは1匹いたら100匹いるという。高市首相が本腰を入れてクルド人を1匹残らず駆逐することだ」と叫んでいた。差別・排外主義政策を推進する高市早苗政権に「問題解決」を求める姿は、公的な差別が街中のヘイトスピーチと響き合い、暴力を増幅させている危険な現状をよく表していた。
ヘイトスピーチは選挙演説でもまかり通り、クルド人に対してヘイトクライムが日常的に起きている。電車内で男性が突然殴られ、公園で子どもが日本人の大人に暴力を振るわれる。解体工事現場でシートが切り裂かれ、脅迫電話がクルド料理店にかかってくる。安田さんはそうした実態を示し、解消法の限界を浮き彫りにした。
「極右」議員も現状憂慮
外国人人権法連絡会の師岡康子弁護士は、人種差別撤廃法が必要だと訴えた。差別をなくす政策を定めた基本法、禁止や制裁の規定を盛り込んだ禁止法、被害者を救済する人権機関の設置法という三つの性格が必要で「現在は国が政策によって差別を煽っている。本来は人種差別撤廃条約に基づき国や自治体が差別を禁止し、終了させなければいけない」と説いた。
この10年で解消法を根拠にヘイトスピーチを違法と認定する司法判断が積み重なり、川崎市をはじめ差別禁止・制裁・救済条例の制定も進んだとも指摘。「禁止や制裁、救済の仕組みが求められている表れだ。解消法では差別が止められず、条約上の義務もある。国会議員には自信を持って法改正を進めてほしい」と求めた。
解消法の制定に尽力した議員も思いを語った。公明党元参議院議員の矢倉克夫氏はヘイトデモの襲撃を受けた川崎・桜本の在日コリアンの訴えが出発点になったと振り返った。自身は昨年7月の参院選で参政党新人に競り負け、「分断に政治が関わっていることが心苦しい。人々の思いをつなげ、支え合う社会をつくるのが政治であるはずだ」と悔しさをにじませた。
外国人排除を強める入管難民法の改悪を参院法務委員会で目の当たりにしてきた共産党の仁比聡平議員も「法務省が差別に立ちはだかる行動をしていないのが本当に悔しい。ヘイトスピーチを許さない取り組みをもっと発展させないといけない」と力を込めた。
途中退席した自民党の西田昌司参院議員は取材に「この10年でヘイトスピーチへの対応だけでは足りないと分かった。平和や格差是正なども推し進める必要がある」と語った。「極右」と批判される議員でさえ口にする平和や平等が、やまないレイシズムがもたらす危機的状況を物語っていた。
(『週刊金曜日』2026年6月12日号)
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