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自民議員の抵抗と「悔し涙」の背景は? 再審制度見直す刑事訴訟法改正案を国会で議論

佐藤和雄・ジャーナリスト|2026年6月10日6:47PM



 2024年10月に再審裁判で袴田巖さんの無罪が確定してから1年7カ月。ようやく政府は5月15日、再審(裁判のやりなおし)制度を見直す刑事訴訟法改正案を閣議決定した。今国会での成立をめざしており、5月中には衆議院法務委員会での議論が始まる予定だ。再審に関する刑事訴訟法の規定見直しは、戦後初めてである。

「断腸の思いで了承した」と語る自民党の柴山昌彦衆議院議員。(「ABEMAニュース」画面から)

 閣議決定に至るまでには、再審制度見直しに取り組んできた自民党議員による、法務省案への抵抗と被害者らが求める内容を実現させようとする強い主張があった。ただ、その主張が期待通りに実現したとは言い難い。

 5月13日に自民党の合同部会での議論が終結した後、超党派の「えん罪被害者のための再審法改正を早期に実現する議員連盟」の主要メンバーだった自民党議員たちが記者会見を開いた。

 議連事務局長の井出庸生衆院議員は冒頭でこう述べた。「結論だけ申し上げれば、悔し涙の(部会長への)一任ということだったと思います」

 会長の柴山昌彦衆院議員も苦しい表情を浮かべながら「今回の(法務省による)再々修正案で党内手続きにさらに進めるということを、断腸の思いではありますけれども了承させていただきました」と語った。

「悔し涙」を流し「断腸の思い」を抱きながらも法務省の再々修正案を受け入れざるを得なかった背景には、主に二つの理由がある。一つは、法務省案が最初に提示されたものからはそれなりに修正されたこと。もう一つは、この機会を逃すと今国会での法案提出は実現せず、ある意味で法務省・検察の「逃げ勝ち」になってしまう恐れがあることだ。

 その思いを柴山氏は「この法律案が前に進まなかった場合に(巖さんの姉の)袴田ひで子さん、あるいは(福井中学生殺害事件で再審無罪となった)前川(彰司)さんのような不幸な被害者が引き続き、変わらず出てしまうということに比べて、半歩でも前進したほうが良いという判断のもとで、次の手続きに進めるということを決めさせていただいた」と語った。

「抗告禁止」で残る懸念

 柴山氏らが悩ましい決断を迫られた問題の一つが検察官の不服申し立てだ。以下は井出氏が自分のX(5月14日付)に書いた説明である。

「本則にある『抗告できる規定(刑訴法450条)』から再審にかかるところを削除して、まず抗告を不可能(禁止)とし、但し書きの条文を新設して、『認めるとたり得る十分な根拠がある場合』に抗告を可能としました」

「『認めるとたり得る十分な根拠』とは何なのか?と問うたところ、『重大な事実誤認や重大な法令違反で、再審開始決定が取り消される高度な蓋然性があるもの』と答弁がありました。抗告の完全禁止には至らなかったものの、これまでのような機械的抗告はなくなると考えています」

 本当にこれまでのような検察による根拠のない「機械的抗告」はなくなるのか――。そうした疑問が消えないために、再審制度見直しに取り組んできた自民党議員らの表情は厳しかったのだろう。

 中道改革連合、チームみらい、日本共産党は5月15日、検察の抗告禁止を明記した刑事訴訟法改正案を衆院に共同提出した。この改正案は、廃案となった超党派議員連盟の改正案を基にしている。

 議論の舞台は国会へと移った。

(『週刊金曜日』2026年5月29日号)

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