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IPPF新事務局長来日イベント 「フェミニスト外交」で世界のSRHR推進を

古川晶子・ライター|2026年6月2日6:30PM

 5月7日、東京都内のメキシコ大使館で、国際家族計画連盟(IPPF)新事務局長来日記念イベント「フェミニスト外交・国際協力とSRHR」が開催された。IPPF新事務局長のマリア・アントニエタ・アルカルデ氏は「フェミニスト外交はスローガンではない。誰の命を優先するのか、誰の権利を守るのか、誰の意思による制度を作るのかを決断することだ」と述べ、不安定な国際情勢下でSRHR(性と生殖に関する健康と権利)推進の取り組みが直面する困難を克服しようと呼びかけた。

マリア・アントニエタ・アルカルデ IPPF事務局長(右から3人目)と登壇者。(撮影/古川晶子)

 フェミニスト外交(FFP)とは、「ジェンダー平等」および「女性・マイノリティの権利保護」というフェミニズムの概念を外交政策の中核に据え、あらゆる差別や暴力の問題を解決しようとする、国際政治の新しい潮流だ。性暴力防止や避妊・中絶へのアクセス改善を目指し、それらの施策や選択に影響を及ぼす経済力や社会的地位の不平等を克服しようとするSRHR推進とは密接な関係がある。2014年にスウェーデンが世界で最初にフェミニスト外交政策を打ち出し、カナダ、フランスと続く。メキシコはその次、20年に列に加わる。ラテンアメリカでは初だ。アジアではまだどの国も手を挙げていない。

 メキシコは、人口や男性中心文化(マチズモ)を持つ点、24年に同国初の女性リーダーが誕生したことなど、日本と共通点が多い国だが、議会や内閣、最高裁判所でパリテ(男女同数)を実現している。駐日メキシコ大使のメルバ・プリーア氏は、到達までに約100年の闘いがあったとし、「政治家は法制度を変えることができるが、社会全体を変えるのは市民運動の力。メキシコでも日本でも運動を後押ししていく」と語った。

米国依存からの脱却へ

 アルカルデ事務局長の指摘する「不安定な国際情勢化の困難」とは、25年に始まった米政府の方針転換だ。世界最大の「ドナー国(援助国)」であった米国が、USAID(国際開発庁)を閉鎖し、資金や人員の大半を引き揚げたことで、アフリカを中心とする地域で、女性の医療支援や性的少数者の権利擁護など、多くの事業が停止に追い込まれている。国立社会保障・人口問題研究所の林玲子所長は、「米国の援助に頼る構造から脱却し、世界の変化に対応していかなくてはならない」と述べた。

 一方、長年IPPFに財政支援をしてきた「ドナー国」である日本政府は現在のところ、米国の動きには同調していない。

 外務省の喜多洋輔国際保健戦略官は、SRHRは日本にとって外交政策の重要な構成要素だとし、「国内の政策においても、人口問題を考えるには現実的になる必要がある」と語り、保守的な政治家が包括的性教育に猛反対している状況ではあるが、SRHRを推進していくという意欲を示した。

 元外務副大臣の宮路拓馬衆議院議員は、「男性中心の政党である自民党に所属し、男性議員の身でSRHRに取り組み、ついたあだ名がミスターマイノリティ」と自己紹介。フェムテック(女性特有の健康課題に取り組む技術)の普及や刑法性犯罪規定の改正等に携わり、「最初は(施策を進めることに)勇気が必要だったが、始めてみると女性も男性も支持してくれた」と経験を語った。また、メキシコの歩みに勇気づけられたとして、ジェンダー平等実現には「雨の日もあるが晴れの日も来る。ここから米国依存を脱却し、いつか米国を温かく迎えよう」と述べた。

 会場には若い女性の姿が目立った。質疑応答では女性たちから次々と手が挙がり、国や世代を超えた連帯の機運を感じさせた。

(『週刊金曜日』2026年5月22日号)

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