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「国旗等損壊罪」反対に署名8000筆 「刑罰で心縛る愛国心強制法だ!」

永尾俊彦・ルポライター|2026年6月2日6:45PM

 教育基本法改悪(2006年)に反対した教員を中心に全国の約100人でつくる「国旗等損壊罪」反対連絡会の都立高校元教員・伏見忠さん(68歳)と千葉県立高校元教員・渡部秀清さん(78歳)が、5月11日に東京都内で記者会見。現在約8000筆が集まっている反対署名の広がりを報告し、自民党が今国会に提出しようとしている同法案の危険性を指摘した。

5月11日、東京の司法記者クラブで会見する伏見忠さん(左)と渡部秀清さん。(撮影/永尾俊彦)

「外国国旗を汚したり破ったりしたら拘禁刑を受けるかもしれない。でも日本国旗はどう扱ってもいい。それはおかしい」。高市早苗首相は1月27日、街頭演説でこう訴え、この「矛盾」の是正のため「国旗損壊罪」が必要だとした。だが伏見さんは、刑法92条の外国国章損壊罪で刑罰が科されるのは「良好な外交関係」のためであり、「日の丸」に同じ保護法益はないので「矛盾はない」と述べた。

 また、この法案を検討している自民党のプロジェクトチーム(PT)が、保護法益を「国旗を大切に思う国民感情」としていることについても「近年の排外デモに『日の丸』が使われ、恐怖や反感を持つ人もいる」と反論。同PTが、「他国には自国の国旗損壊罪がある国が多い」としている点についても「米国は連邦最高裁判決で国旗を焼く行為も『表現の自由』として無罪にし、EU(欧州連合)諸国でもEU人権条約から国旗損壊などの政治的批判行為は無罪とされる確率が高い」と反駁した。

 さらに、同PTが「損壊」の意図や動機を問わず外形的行為を対象としている点には、政権批判や芸術などの「表現の自由」が奪われると批判。また、他者所有の「日の丸」を損壊した場合は器物損壊罪で対応できるほか、「将来の損壊を抑止」するとしている点については、予防立法は公衆衛生などで被害発生が明白に予想できる場合に限られる、として立法事実の不備を突いた。そして、この法案は国家が主権者である国民に敬意を強制する「心を刑罰で縛る愛国心強制法」がその本質であり、主従が逆転、「国の構造(立憲主義)が変わってしまう」という、根本的な危うさを指摘した。

「日の丸警察」が出現?

 次に渡部さんが「1999年の国旗国歌法審議の際、政府は強制しないと言ったが全国の学校では処分を背景に強制が進み、子どもたちは歌詞の意味も教えられずに起立斉唱させられてきた」と法律が強制を広げる実態を告発した。

 国旗国歌法制定後、東京都教育委員会は「国旗国歌」を強制する通達を出し、伏見さんら教職員延べ484人を処分。大阪府・市は条例で強制して教職員延べ67人を処分した。処分や刑罰は同調圧力を強める。伏見さんは「コロナ禍の『マスク警察』のように、この法案が成立すれば『日の丸警察』が必ず出てくる」と断言した。

 国旗損壊罪には自民党内からも疑問の声が上がっており、岩屋毅前外相は「政治的アピールのための立法」(『西日本新聞』4月24日)とその狙いを見透かしている。

 愛国心を法律で強制すれば人々は萎縮し、批判する力を失っていく。そうした空気は戦前のように「お国のため」に身を捧げることを美化しかねない。会見後の取材で伏見さんは「国旗損壊罪の導入は、国のために死ねる人間をつくる方向へと社会を押しやる危険がある」と語った。それを受け渡部さんは「大軍拡の下で戦前同様全国民を『日の丸』で統合、戦争への総動員体制がつくられていく」と警鐘を鳴らした。

(『週刊金曜日』2026年5月22日号)

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