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〈性売買検討会はどこへ向かう?〉田中優子

田中優子・『週刊金曜日』編集委員|2026年5月19日3:15PM

田中優子・『週刊金曜日』編集委員。

 性売買の規制に関する検討会が始まった。会合はすでに3回行なわれている。買春者の処罰を初めて盛り込むかもしれない重要な検討会だ。記者会見では検討会の様子が公開された。

 何に注目すべきか。2点ある。一つは、現在の売春防止法の「公衆の目に触れるような方法で、人を売春の相手方となるように勧誘すること」という文言に表れている「勧誘」つまり誘惑する側にのみ罰則がある、という点が改正されるかという点だ。現在と逆に買春を性搾取として罰し、売春側の罰則をなくし、さらに売春者を性搾取の被害者として支援するところまで改正すべきだろう。

 もう一つは「公衆の目に触れるような方法」とある「見える」売買春だけでなく、適法とされている「見えない」売買春にまで、改正を適用する必要がある、という点だ。その2点によって、改正が目指す目標が達成できる。その目標とは、憲法が保障する「人権の尊重」を実現することだ。

 しかし改正へのハードルがすでに見えてきた。検討会がヒアリングした弁護士の若林翔氏は「性風俗産業等への影響を考えますと現行の売春防止法を維持するのが最も適当」と言ったそうだ。

「性交」を「性交類似行為」と言われるものまで広げることになると適法・合法に行なわれている性風俗産業そのものが犯罪化されることになりかねない。そうすると客は性風俗産業自体も利用しづらくなるので業界が萎縮してしまう。現在の性風俗産業関連の年間市場規模は約2兆円~5兆円あり、関連する不動産業なども含めるとさらに経済規模は大きくなる、と。そして「性風俗関連特殊営業」の届出数は2024年末では3万3890件で、そこから推計すると、働いている女性等は215万人くらい、という数字を示し、「公衆の目に触れる」買春の犯罪化は、現在適法である「見えない」売買春の犯罪化に繋がり、それが経済への打撃になる、という主張をしたのである。

 売春をめぐる法律は常に業界の都合で動いてきた。売防法が「公衆の目に触れるような方法」のみ対象としている理由もそこにある。買春者の処罰は性売買を地下化させると反対する人たちがいるが、初めから地下化している。検討会では、売春という生き方をなくすことによって性搾取をなくす方法が、一切検討されていない。経済だけが論じられている。明治政府の芸娼妓解放令も戦後の売防法も、女性の貧困を利用して業者が儲かる仕組みだった。そこから抜け出さねばならない。

(『週刊金曜日』2026年5月15日号)

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