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水俣病公式確認から70年 国が患者と面会も被害実態聞く姿勢欠く
斎藤靖史・フリージャーナリスト|2026年5月19日3:20PM
水俣病が公式確認されてから70年の節目を迎えた5月1日、熊本県水俣市では各所で慰霊の催しが開かれた。石原宏高環境相は前日から水俣入りして患者・被害者団体と連日の懇談に臨んだ。高齢化が進む未認定の患者たちは「患者を救うのは今しかない。生きているうちに救済を」と迫ったが、環境相も環境省もこれまでと同様、被害者たちの訴えに対して聞き流すばかりの回答に終始した。

環境相が前日入りするようになったのは、2年前の大臣懇談中、被害者の訴えを環境省職員が強制的に打ち切った「マイク切り事件」をめぐり激しい批判を受けたからだ。石原環境相は昨年同様、慰霊式前日の4月30日から水俣入りし、2日間にわたって患者・被害者団体との懇談に臨んだ。
30日夕の懇談で、石原環境相はマイク切り事件に対して「改めてお詫び申し上げたい」という謝罪の言葉から始めた。しかし前回に続いて懇談時間こそ長かったものの、患者・被害者が求める認定基準の緩和に向けた見直しや、水俣病の被害の全容を解明して被害者の掘り起こしにつながるような健康調査の実施については、議論がかみ合わずに平行線で終わった。訴えを聞き流す環境省の姿勢は以前と何も変わらなかった。出席した水俣病不知火患者会の元島市朗事務局長は「環境省なり熊本県が水俣病の被害をきちんと見ようとしていない。被害実態について話を聞く姿勢、決意がない」と強く批判。「官僚に任せても水俣病は解決しない。政治決断しか解決の道筋はない」と石原環境相に迫った。
誠意ない無責任発言も
石原環境相は同日午後、市内の施設で胎児性患者の坂本しのぶさん(69歳)らと懇談した。坂本さんは1977年、環境相の父親で環境庁長官(当時)として来訪した故・石原慎太郎氏に抗議文を手渡したが、慎太郎氏が会見で「今会った患者さんたちもかなりIQというか知能指数が低い」「これは彼女たちが書いたのですかね」という侮蔑的な発言をしたことを受け、さらに抗議した経験がある。
坂本さんは懇談後の取材で「しっかりやってほしい、水俣病のこと。何べんも何べんも同じことを言うてきた」と悲痛な思いを語った。「私たちは水俣病になって、代わりならんでしょう? 大臣は代わるけど」。
続いて石原環境相は市内のグループホームに赴き、寝たきりになった胎児性患者の金子雄二さん(70歳)と居室で面会した。金子さんは水俣病患者として障害福祉サービスによる訪問入浴介護の利用を求めているが、65歳以上は介護保険でないと認められないと水俣市から断られ、自己負担を続けている。環境相は金子さんを前に「お気持ちはよくわかります。水俣市長にもお伝えしたい」とあたかも協力するような発言をした。
しかし、石原環境相は翌1日夕方の記者会見で「現実はなかなか難しい。(金子さんが)目の前にいらっしゃったので、そういう発言をした」と態度を翻した。患者・被害者の訴えを打ち切ったマイク切り事件を反省しているかと思いきや、今度はその場限りの無責任な言葉でその場をごまかし、悪びれる様子もない。
政治家である環境相も、環境省の官僚も不誠実な対応しかしないなら、水俣病問題の解決は誰に託すことができるのだろうか。これからの道のりが険しいことだけは確かだ。
(『週刊金曜日』2026年5月15日号)
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