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月刊誌『マスコミ市民』休刊、59年の歴史に現在の社会問題解決のヒントが

永田浩三・『マスコミ市民』編集委員、武蔵大学名誉教授|2026年4月30日4:26PM



 59年にわたって続いた月刊誌『マスコミ市民』が2026年3月号で終わりを迎えた。最後の半年、わたしはにわか編集委員として最後を看取る役割の一端を任された。この老舗の雑誌がどんな足跡を刻んできたのかを確かめたくて、創刊号からのバックナンバーを読み返してみた。するとどうだろう。これがとんでもなく面白く示唆に富んでいる。

通算686号で休刊となった月刊誌『マスコミ市民』。(撮影/永田浩三)

 マスコミという言葉はもはや死語に近いが、テレビ・ラジオ、新聞だけでなく、雑誌や映画の制作者たちも文章を綴っていた。それとともに視聴者・読者の声が幅広く寄せられた。中には奨学金を得て大学に通い、新聞配達をする若者の声もあった。そこには新聞の流通を支える自負があった。

 1967年創刊当時のNHKの朝ドラは『おはなはん』。『紅白歌合戦』の視聴率は76・7%に上った。創刊の言葉には、マスコミに真実を語らせ、優れた文化を生み出すためには、マスコミにいる人間だけが悩んでいるのではなく、情報を受け取る側の市民の声をマスコミに還流しなければならないと書かれている。編集部を支える「マスコミ市民会議」は、市川房枝・中野好夫・芥川也寸志など11人の常務理事。NHKの労働組合の委員長・上田哲が代表理事を務め、情報の送り手と受け手が真摯に出会うためのプラットフォームを目指した。

 創刊号には、広島原爆ドームの保存にいたるまでの軌跡が考察されている。当時、行政や文化人は保存に消極的であった。保存が実現したのは、市民の投書とキャンペーンを続けたマスメディアが果たした役割が大きい。

 68年には、早速放送中止事件が詳細に取り上げられている。舞台はNHK京都。ラジオのローカル番組で、井ヶ田良治・同志社大学教授(当時)が「靖国神社の国家護持法案」について、法制史の研究者の立場から批判。それが放送前日に業務命令として中止が言い渡された。『マスコミ市民』は、放送台本、組合交渉の経緯、学会の声明、職制の弁明など事件の全貌を伝えた。わたしは事件から10年後、京都局に勤務したが、バックナンバーを読むまでまったく知らなかった。他にも記事の差し止め、番組改変など事件はきりがない。

『マスコミ市民』の特徴は、記者やディレクターの多くが実名、あるいは匿名で取材・制作現場の課題を世にさらし、市民とともに考えようとしたことだ。

風通し良かった過去も

 イタイイタイ病や水俣病などの公害病や被差別部落の取材現場などで、自分たちの報道姿勢はこれでよいのかを問い、声を上げられない人の声を届けようとする取材者たちの姿に感動する。

 72年、沖縄返還を花道に引退する佐藤栄作首相の記者会見は大荒れだった。新聞記者は退席し、テレビカメラは残った。「テレビは好きだ」と首相から言われたことにNHKの記者たちは屈辱を覚え悔しがった。なんとまっとうで健全なことだろうか。

 メディアの内と外の風通しが良く、理不尽なことに対峙し、市民がしっかり応援したのはいつ頃までだったのだろう。59年分の『マスコミ市民』は、決して古びてなどおらず、今の社会の課題を解決するためのヒントが隠れているのではないか。精緻に読み直し、まとまった本にして世に問うことができないかと考えている。

(『週刊金曜日』2026年4月3日号)

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