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新潟地裁が男女8人全員を「水俣病」患者と認定 原告側は評価も県と市は控訴

林衛・富山大学准教授|2026年4月16日5:09PM

 新潟水俣病の認定申請を棄却された新潟県の60~90代の男女8人(2人は死去)が県と新潟市に対し、処分取り消しと認定を求めた訴訟の判決が3月12日、新潟地裁であった。同地裁は8人全員の処分を取り消し、患者として認定するよう県と市に命じた。鈴木雄輔裁判長は「感覚障害の態様が典型例と異なっていても水俣病である、との蓋然性を否定できない。本件各処分はいずれも違法であって、取り消しを免れない。公害健康被害補償法(公健法)上の水俣病認定をすべきことは公健法の規定から明らか」と理由を述べた。

原告5人と弁護団ら(左)は新潟県庁を訪れ、県と新潟市に対し新潟地裁判決を受け入れるよう要請した。3月17日、新潟市の県庁で。(撮影/林衛)

 新潟水俣病を巡る同様の行政認定訴訟では東京高裁(河野清孝裁判長)が2017年11月、感覚障害だけでも水俣病の可能性を認め、9人の原告全員の認定を市に命じ、市は判決を受け入れた。新潟水俣病は、昭和電工(現レゾナック・ホールディングス)鹿瀬工場が阿賀野川に排出したメチル水銀が原因の四大公害病の一つ。1965年に公式確認された。

 今回の地裁判決は、水俣病被害者救済法に基づく救済を受けられなかった患者ら、関西に住む128人を水俣病と認め、賠償を命じた「ノーモア・ミナマタ第2次近畿訴訟」での大阪地裁判決(2023年9月)の判断と同じ枠組みを採用。

 幼少期に阿賀野川流域で取れたメチル水銀に汚染された魚介を食べたことによる身体内部への曝露によって、手足の先に現れる「四肢末梢優位の感覚障害」に代表される関連症状がこの地域では、他地域に比べて25倍も多発した。曝露と発症の因果関係の蓋然性(原因確率)が95%以上となり、他に何か特段の事情がない限り、原告らの症状は水俣病だと認定されるというもので、原告側の主張をほぼ全面的に認めた。原告側弁護士は「完全勝訴」と評価した。

 原告と弁護団は17日、県庁で県と市の担当者と面会し、判決の受け入れと、26日の控訴期限までに県知事、市長との面談を実現するよう要請。しかし、「控訴するかどうかは検討中であり、面談要請については知事、市長に伝える」と明快な回答を示さなかった。

行政による差別継続

 中原八一市長は19日の記者会見で「(控訴するかどうかを)国、県と検討している。法定受託事務として国の基準に従って『丁寧な審査』をしている結果と、判決との食い違いがなぜ生じるのか」と疑問を呈した。

 中原市長が言う認定審査をめぐる国の基準とは環境省環境保健部長通知にすぎず、法律ではない。今回の新潟地裁判決は、公健法の目的どおり「慎重」に原告の事情を検討し、高度の蓋然性でもって水俣病だとした。そう考えれば、同市長の疑問も解消するのではないか。県と市が地裁判決を受け入れず控訴したら、阿賀野川の流域住民の間で多発した水俣病関連症状の原因を特定し、水俣病とは別に対応しなければならないとも言えるだろう。原告面談を断った同市長は、「原告の方々を含め被害に苦しむ方々を巻き込むことになり誠に心苦しく思います」としながら、環境省から「法定受託事務は全国で統一的に行なわれるべきものであり、本市による独自運用は許容しない旨が示された」などと26日、県と東京高裁に控訴。原告側は撤回を求めた。メチル水銀以外に何ら多発の原因が明らかにされていない以上、控訴は水俣病被害者の放置、継続を意味する。行政による差別だ。

(『週刊金曜日』2026年4月3日号)

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