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静岡県リニア工事、副知事が年内着工を示唆 市民は議論継続求め署名活動

井澤宏明・ジャーナリスト|2026年4月14日6:16PM



 リニア中央新幹線品川―名古屋間の沿線7都県のうち唯一着工されていない静岡県で、水資源や自然環境を守ろうと慎重な審議をしてきた県の有識者会議「専門部会」が3月26日、終了した。これを受け県副知事が年内着工を示唆、前のめりな県の姿勢に大井川流域住民は危機感を募らせている。

28項目のうち8項目の審議を一気に済ませ終了した静岡県の専門部会。3月26日、県庁で。(撮影/井澤宏明)

「静岡問題」とされる事の起こりは2013年9月、JR東海が環境影響評価準備書で、南アルプストンネル工事で生じる湧水により「大井川の流量が毎秒2立方メートル減少する」との予測を明らかにしたこと。県によると、約60万人分の生活用水に匹敵する。

 川勝平太知事(当時)から14年3月、「トンネル湧水の全量戻し」を求められたJR東海が「原則としてトンネル湧水の全量を大井川に流す」と応じたのが4年半後の18年10月。県は「中央新幹線環境保全連絡会議」に「地質構造・水資源」「生物多様性」の二つの「専門部会」を設けた。この席で工事中の一定期間は県外に湧水が流出してしまうことが明らかになり議論は膠着。事態打開のため国土交通省が20年4月に始めた有識者会議は「トンネル湧水量の全量を大井川に戻すことで、中下流域の流量は維持される」とする中間報告を出すなどして23年11月、議論を終えた。しかし、県は47項目中30項目(後に28項目)が未了と専門部会での議論を独自に続けた。

 24年5月の鈴木康友知事就任後も、専門部会は変わらず役割を果たしてきた。トンネル掘削により減渇水の恐れのある大井川上流の沢の調査を渋るJR東海に実施を強く迫り、後に生物が死滅する可能性の一端が明らかになった。ところが25年4月、総務省出身の平木省氏が副知事に就任すると、議論は一気にスピード感を増した。

「酸性土」受け入れ

 象徴的なのが、重金属を基準値以上含む「有害残土」の扱いだ。JR東海は大井川右岸の「藤島」(静岡市)への恒久処分を計画したが、県は熱海市の土石流災害を受け施行した「県盛土環境条例」に基づき拒否してきた。しかし、同年8月4日の専門部会で県は、藤島の盛り土はリニア事業の一部だという国交省の解釈を盾に容認姿勢に転じ、より分けた「酸性土」受け入れを最終的に認めた。

 最後の専門部会となった26年3月26日の会合でも「シカの食害を防ぐ柵を設置することなどにより(トンネル工事で)損なわれる南アルプスの自然環境と同等以上の自然環境の保全・創出が期待できる」というJR東海に対し、「(損なわれる自然環境と)同等か以上かわからないというのが専門家としての考えだ」と委員から異論が出たが、岸本年郎部会長はこの項目を「対話完了」とし、残る8項目を一気に片付けてしまった。会合後、平木副知事は着工容認について「諸条件がクリアされれば、年内もありうるんじゃないか」と述べた。「諸条件」として、森林法や河川法、盛土規制法などの手続きや流域住民への説明会、流域首長や関係者の理解を挙げた。

 県の姿勢に反発する市民団体「大井川の水を守る62万人運動」は「スピード感重視ではなく、県民が納得するまでJR東海と対話を継続すること」などを知事に求める署名を進める。北村正平・藤枝市長は2月26日、市議会で「いたずらにスピード感を強調するのではなく、真に流域住民の安心につながる丁寧な対応を県に申し入れたい」と述べている。

(『週刊金曜日』2026年4月10日号)

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