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連行被害者の遺骨返還交渉で在日女性が日本政府に怒り なぜDNA鑑定を遅らせる?

本田雅和・ジャーナリスト|2026年4月14日6:05PM

 日本の戦争に強制連行されて殺された朝鮮人の元・軍人軍属遺族への遺骨の返還を求める宗教者や市民団体が、3月24日、日本政府代表と交渉した。一人の在日朝鮮人女性は、親族の靖国神社への「合祀」記録を最近入手した証拠文書として外務省と厚生労働省幹部らに提出。「加害国による一方的合祀」を非難するとともに山口県宇部市の海底炭鉱から発掘された「長生炭鉱」犠牲者遺骨と同等に早急なDNA型鑑定と遺骨返還を求めた。

「遺族が死ぬのを待っているのか」と涙ながらに訴える兪映香さん。(撮影/本田雅和)

 在日韓国人遺族の兪映香さん(35歳)は、父方の祖母の兄2人が、全羅南道の実家の長男・二男として家族の守り手だったのに、日本軍により米領グアム方面に連行されて戦死した。

「戦時には望みもしないのに〝日本人〟として連れていき、戦後は朝鮮人だからと援護から外したうえに遺骨確認のためのDNA鑑定も受け付けてもらえない」という実態を明らかにした。

 厚労省は朝鮮人の軍人軍属遺族のDNA鑑定は、韓国への遺骨返還が目的なので韓国政府との協議と合意が必要となっていると「鑑定を進めない理由」を釈明している。しかし、在日遺族やそのDNA鑑定は対象遺骨も国内各地の寺院などに安置または放置されてきたため、国内だけで実施可能だ。交渉に同席した国会議員らも「在日遺族には鑑定も返還も国内で完結するはず」と外務省の姿勢を批判したが、外務省は在日遺族への鑑定方針を明確にせず、兪さんは「在日遺族として耐えられない」と差別的待遇の改善を訴えた。

戦前は徴用、戦後は合祀

 外務省の担当官は「お話を伺い苦しく感じているが、人道的な見地から進めていく。韓国政府との外交交渉の中身を具体的には語れない」などと述べた。これには歴史研究者の竹内康人氏が戦前の植民地支配の責任を厳しく問うた。

 当時、徴用朝鮮人労働者を連行し、炭鉱などへの配分・管理を司った大日本産業報国会の拠点は厚生省にあった。戦後は同じ厚生省が軍人軍属の引き揚げ・援護から靖国合祀への手続きまで担当。厚生労働省の朝鮮人遺骨の放置政策に繫がっていると指摘した。

「問われているのは真相究明だ。あなた方は人道的というが、人道とは在日朝鮮人遺族のDNA鑑定を進めること。あなた方は人道を語る前に動員の責任を取るべきじゃないか。1910年の日韓併合条約も朝鮮の人々にとっては暴力。65年の国交〝正常化〟条約も遺族を放置するための暴力だった」と厳しく追及した。

 この日の交渉を受ける前に、厚労省側が市民団体側の追及を「カスタマー・ハラスメントだ」と非難したことも取り上げられた。竹内氏は「それは厚労省の役人としての人格が侵害されるから許せないということか。国家の暴力を受けて尊厳を回復したいという人々の思いを受け止めて、国家公務員としてその責務を果たそうとする根本的な気持ちはないじゃないか」と嘆き、参加者の間にさらに怒りが広がっていった。

兪さんが発見した、祖母の兄が靖国神社に合祀されていた「証拠文書」の写真の一部(プライバシー保護のため住所などを黒塗りにしました)。

(『週刊金曜日』2026年4月10日号)

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