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「外国籍職員採用中止をめぐる三重県1万人アンケートは違法だ」 元地方公務員が監査請求

中村一成・ジャーナリスト|2026年4月14日5:57PM


「差別を傍観してはいけない。差別解消に向けて努力しなければいけない。これは県反差別条例の理念であり、県民の責務です。私はそれを果たしたい」。記者会見で元地方公務員の竹本昇さん(76歳)はこう強調した。

3月26日、記者会見後に三重県庁前の抗議街宣でマイクを握る竹本昇さん。(撮影/中村一成)

 三重県が検討する外国籍職員の採用中止をめぐり、県が判断材料として実施した県民1万人アンケートは違法だとして、竹本さんが3月26日、委託先の民間調査会社に支払う予定の約790万円の差し止めを求めて住民監査請求した。「透明性と公平性の確保が必要」と、県監査委員ではなく外部監査人による審査を求めている。

 外国籍職員の採用中止の検討は昨年12月25日に一見勝之知事が表明した。県は今年1月から2月に実施した定例の県民アンケートに、国籍条項復活への賛否を問う「問16」を盛り込み、現在は民間調査会社が集計作業をしている。

 請求人側は2月、情報公開で委託契約に関する記録を入手した。県が昨年8月、業者に調査票案を送った際に外国籍者採用の設問はなかったが、12月5日、県は業者に「知事が追加したいと考える一部の設問について所管するセクションと折り合いがつかない」と先延ばしを求め、同月16日の調査票案で問16が初登場、9日後の記者会見で現物が提示された。

 公開文書から分かるのは知事の独断専行である。また県はアンケートの対象を「県内居住の18歳以上の方」と公表しているが、実際は成人の日本国民だけが登録された選挙人名簿からの無作為抽出で、職業選択権を左右される外国籍住民は端から排除されている。

不安や差別意識を助長

 会見で代理人の金銘愛弁護士は「県民として意識調査や県政運営に参画する機会を一律に奪われており、地方自治法10条の『地方公共団体の役務の提供をひとしく受ける権利』を侵害する違法行為だ。国籍を理由にした差別を禁じ、差別解消を知事の役務と定めた『差別を解消し、人権が尊重される三重をつくる条例』にも違反する」と批判した。金弁護士は知事の言動に呼応してネット上に溢れた差別書き込みの数々も示し、その煽動効果を明らかにした。

 加えて馬場啓丞弁護士は知事の裁量権逸脱濫用も指摘した。調査票案に問16をねじ込んだことや、情報漏洩の「懸念」を強調した誘導的な質問文。人権問題なのに県の人権施策審議会に諮問していないこと。かりに情報漏洩が起きても「刑法や地方公務員法」で対処できることに対し、国籍による一律排除という極端な手段を唱える知事の「比例原則」違反も挙げた。

 知事は方針表明から現在に至るまで、情報漏洩の恐れを繰り返し主張してきた。念頭には在外国民にも国の情報活動への協力を義務付けた、中国の「国家情報法」があるとみられる。請求人側はそれについても条文を基に「同法で求められる情報は『中国の安全と利益に危害を及ぼす行為に関する情報』だ」と示し、その上で、知事の言動は「外国人は潜在的スパイとの印象を振り撒き、不安や差別意識を助長する」と断じた。

 竹本さんは伊賀市在住で、これまで朝鮮民主主義人民共和国への人道支援などに取り組んできた。会見で竹本さんは、「私は、一見知事の差別と排外行為の共犯者になることはできない」と二度述べ、「在日外国人とは隣人同士として排外主義と民族差別をなくし、信頼に基づく平和で友好的な地域社会を築くべきです」と訴えた。

(『週刊金曜日』2026年4月10日号)

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