〈高市早苗になるな〉田中優子
田中優子・『週刊金曜日』編集委員|2026年4月13日7:15PM

総選挙で自民党圧勝の理由とされているのが、「今までとは違う」「何か新しい」という印象である。自民党はそれを女性首相という存在で仕掛けた。しかし内実は新しいどころか、戦前回帰の軍国主義であり、そこに税金を注ぎ込むという古い政策である。国論を二分するテーマを独自に決めてしまう、という全体主義への仕掛けも、新しいどころか使い尽くされた政治手法だ。それを見抜けない有権者が見た「新しさ」とは何なのか。
すでに昨年末に『朝日新聞』紙上で 一橋大学教授の佐藤文香さんが「ジェンダーの囮」という幻惑効果を説明してくれている。男性が占める地位に女性が就くことで、民主主義や平等が実現したかのような幻想を抱く現象だ。企業が2030年までの目標にしている女性役員比率30%という数字は、その割合で組織が変化することが実証されている。国会議員の女性比率も、高くなると平和的な政策が推進される。
しかし、女性比率が低いままで首相や大統領に女性が就くだけだと、多数派の男性の批判を避けるために、より男性的な政策になるのである。
高市早苗は自分の権力と名誉のために自ら囮になり、女性たちを陥れた。佐藤さんによると軍事も「国民を特定のジェンダー役割の中に上手に配置すること」に支えられているという。高市早苗は、人権や平等を真摯に考えていればすぐにでも実現したはずの、極めて重要な制度「選択的夫婦別姓」に頑強に反対している。なぜ反対するのか。軍国主義国に顔を向けているからである。
自己責任論と競争心を内面化し、男性を真似ることや男性に媚びることで不平等を克服したと信じるのは、多くの女性を更なる不平等に引き込むことだ。必要なのは、見せかけではなく実際に構造的差別を乗り越えることである。
女性たちは男性社会の持っている多くの問題を深く認識し、感じ取り、「同じ人間にならない」でいる必要がある。ミソジニー(女性への憎悪・蔑視)やマノスフィア(男性優位思想)や家父長的意識を見抜き、それと闘う覚悟がなければ、男性社会のピラミッド型権力に呑み込まれ、同じような差別主義者になってしまう。高市早苗のように。
本当の意味で新しい政治組織ができるとしたら、その意識と覚悟を持った女性たちが中心となる組織である。高市早苗になるな、感性と知性を磨け、そして集まれ、と言いたい。
(『週刊金曜日』2026年2月27日号)
※定期購読はこちらをクリック







