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「真実の側に立てた」 崔善愛

崔善愛・『週刊金曜日』編集委員|2026年4月7日3:27PM

崔善愛・『週刊金曜日』編集委員。

 2011年3月11日、福島県内に住んでいた瞳さん(仮名)は小学6年だった。学校から帰るとランドセルを玄関に放り投げ、公園で友だちとブランコに乗っていたとき、大地震が起きた。それでも春休みに入り、毎日のように友だちと遊んでいた。その間、東京電力福島第一原発のメルトダウンやプルームによる放射能の危険性を政府は即座に発表せず、「直ちに健康に影響はない」と枝野幸男官房長官(当時)は言い放った。

 被災当時、6歳~16歳の若者7人が原告となり、「311子ども甲状腺がん裁判」で東電を相手に闘っている。提訴は4年前だが、昨年から原告に加わった瞳さんは、高校2年のときに甲状腺がんを告知された。

〈私は9年前、(甲状腺がん)手術の前日の夜、暗い部屋で1人、途方もない不安や恐怖を抱えていました。そのとき、私の頭に浮かんだのは、「武器になる」という言葉でした。私は当時、「甲状腺がんの子ども」を反原発運動に利用する大人に怒っていました。私は、大人たちの都合のいい「かわいそうな子供」にはならない。なにがあっても幸せでいよう。そう思いました。でも気づくと、国や東電に都合のいい存在になっていました。胃がねじきれそうなほど、悔しいです。私が受けてきたものは構造的暴力です。命より、国や企業の都合を優先する中で、私たちの存在はなかったことにされていると気づきました〉(25年9月17日第15回口頭弁論期日の意見陳述より。一部略)

 瞳さんに会いたいと願ってきたところ、3月4日の第17回弁論後、東京・日比谷での支援者集会で瞳さんの声を聞くことができた。彼女は約200人の参加者を前に堂々と、こう語りかけた。

「今までお医者さんから言われたとおり『もともとあったがんが見つかっただけだ』という言葉を信じていましたが、この裁判を知り、真実に触れました。いかに論点がずらされているか。子どもたちが矢面に立たされているか。今まですりかえられた論理の中で、一人何をどうしたらいいのかわからずにいました。法廷で意見陳述するのは痛みを伴う作業でした。でも痛みを言葉にすることができ、真実の側に立てました」

「怖い、助けて」という心の震えが伝わった。小児甲状腺がんは年間100万人のうち1~2人という希少なもの。にもかかわらず罹患者は400人を超えた。手術や再発で苦しむ患者に、医者も政府も東電も「因果関係はない」と断言する。

(『週刊金曜日』2026年3月20日号)

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