自衛隊訓練の「監視」に対し駐屯地司令が恫喝 沖縄・宮古島の住民が国賠訴訟
下地毅・八重山毎日新聞』那覇支局記者|2026年4月6日8:31PM
自衛隊の訓練を「監視」したところ駐屯地司令に恫喝されたとして、沖縄県宮古島市の清水早子さん(77歳)と上里清美さん(70歳)が3月13日、国と当時陸上自衛隊宮古島駐屯地司令だった比嘉隼人・宮古警備隊長(1等陸佐)に220万円の支払いを求める訴訟を那覇地裁平良支部に起こした。

南西諸島の軍事基地化の一環として2019年に開設した同駐屯地について防衛省は当初、弾薬庫を造らないとしていたが、後に設置した。また「訓練は施設内で行なう。外で行なう場合は事前に住民に周知する」とも約束していたが、今では周知も無いまま公道で訓練をしている。清水さんと上里さんら「ミサイル基地いらない宮古島住民連絡会」が訓練の「監視」に出かけたのは、防衛省がこうした嘘を繰り返してきたからだ。
訴状は2人の行動を「監視活動」「抗議行動」と表現する。提訴後の記者会見に参加し、上里さんが現場で撮影した動画を見た筆者は別の印象を抱いた。「抗議」というからには2人の側から近づいたのかと思っていたが、実際には違ったからだ。
2人が現場となった伊良部島の「いらぶ大橋 海の駅」に着いたのは25年8月6日の明け方のこと。2人が駐車場に移動すると、駐屯地の訓練隊がやってきた。清水さんは「みなさん、おはようございます。すばらしい御来光ですよね。そういう戦闘服姿、迷彩服姿の向こうにきれいな朝日を見るのは残念です」と呼びかけた。拡声器を使ってはいたが若い隊員に語りかけたというべきもので、これが後に中谷元、小泉進次郎の新旧防衛大臣が会見で「過度な抗議活動」と評した行動だった。
一方、比嘉司令は「こらあっ」と怒鳴りつつ2人に「許可を取ってるんですか! われわれは許可取ってるんですよ! やるんだったら! ホテルあるだろ、ホテル!」と詰め寄ってきた。清水さんが答えようとしたが遮り「じゃあ許可取れ! 早く取ってこい!」と怒鳴り続けた。
「軍の本性」あらわに
訴状によると、市民が駐車場を使う場合に県や市の許可は必要ない。しかし、この日の自衛隊は駐車場の一角を標識で仕切って排他的に使用しており、その場合は許可が必要なのに、利用申請すらしていなかった。
訴状は以下のように主張する。南西諸島の島々が戦場になることを想定して自衛隊は米軍と訓練を重ねている。戦争になれば島々の住民も攻撃されるのは明らかだ。だからこそ軍事施設に反対するのは住民の権利であり、憲法が保障する表現の自由だ。主権者が自衛隊の行動を監視するのは文民統制の基礎にもなる。それを司令は虚偽まじりの恫喝で圧殺した。
清水さんは「私たちの被害が無かったことにされたら全国の住民運動に同じことがされてしまう」、上里さんも「今回の恫喝を許してしまえば自衛隊が旧日本軍のようになっていく」と語った。
代理人の仲山忠克弁護士は、沖縄が日本に「復帰」した1972年以降、自衛隊配備には「日本軍の再来」との抗議もあったが、災害救助や不発弾処理などの活動を見た県民は受け入れてきたと説明した。だが今回の恫喝で「自衛隊が軍事組織としての本性をあらわにして県民に牙をむいた」と述べ、「自衛隊はここまで来てしまった。戦争は軍に対する抗議の抑圧の上に成り立つ」と語った。
(『週刊金曜日』2026年3月27日号)
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