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名古屋城天守復元、河村たかし氏「投げ出し」でどうなる? 大型エレベーター要望もゼロ回答

井澤宏明・ジャーナリスト|2026年1月6日6:23PM

河村たかし前名古屋市長の看板政策だったが迷走を続け、昨年10月の同氏の衆議院議員復帰で投げ出された形の名古屋城天守の木造復元(※)。2023年6月の市民討論会での障害者への差別発言問題により「凍結」されていたが、障害者らで作る団体と後継の広沢一郎市長との意見交換会が11月6日、市役所で初めて行なわれた。

 出席したのは「名古屋城木造天守にエレベーター設置を実現する実行委員会」メンバー。河村氏が2018年5月、「史実に忠実な復元」のためとしてエレベーター不設置方針を決めたことに反発。戦後に復興された鉄筋鉄骨コンクリート造りの現天守にある大型エレベーターの設置を求めてきた。

「名古屋城木造天守にエレベーター設置を実現する実行委員会」メンバーに挨拶する広沢一郎市長(左端)。(撮影/井澤宏明)

 だが市は「少なくとも1階に昇降ができる」を条件に「新技術」を公募。採用されたのは定員4人で車いす1台と介助者1人しか乗れない「垂直昇降設備」。各階で乗り換えなければならず、ストレッチャー型の車いすは使えない。

 今回の意見交換会で実行委メンバーは「現天守の内部には23人乗りのエレベーターが2基設置され、障害者や高齢者、子どもなどすべての人が分け隔てられることなく利用できていた」として改めて大型エレベーター設置を要望。これに対し広沢市長は「現在開発を進めているのは梁、柱を傷つけない範囲で昇降できる技術。われわれはここに木造復元とバリアフリーの両立を見出している」と河村市長時代からの主張を繰り返した。

 実行委は梁や柱を傷つけない外付けエレベーターの検討も提案したが、広沢市長はエレベーターの基礎を固めるため遺構を傷つけたり外観を損なったりする恐れがあるとして、こちらも拒否した。

独り立ち試される広沢氏

 問題の市民討論会では、エレベーターを求める車いすの障害者に参加者から「どこまで図々しいのって話で、我慢せいよ」と心ない言葉が投げつけられた。市の検証委員会は昨年9月の最終報告で「これまで事業の実施にかかわった市長・副市長をはじめとした関係者の人権感覚の希薄さが差別事案の根源的な背景・遠因となっていたものと判断する」と指摘した。

 差別発言前と変わらない姿勢の広沢市長に会合後、筆者は「(実行委の)要望に対して実質ゼロ回答だった。エレベーターをつけない方針が差別発言を生んだと思うが、その反省がまったくないと受け取られかねない」と迫ったが、「再度この事業を前に進めるために、バリアフリーにしっかり取り組んでいく姿勢を示した」と広沢市長は真正面から答えなかった。

 実行委メンバーはエレベーターを求めて声を上げたことで、激しいバッシングにさらされてきた。メンバーの1人は会合後、報道陣に向かって「私たちがバリアフリーにしてほしいって言うのは障害者のためだけじゃないんです。高齢者、ベビーカー(使用者)や妊婦さんも声を出せない。誰もが安心して利用できるようにっていう思いを伝えてほしい」と訴えた。

 木造復元に執念を燃やした河村氏は今年10月、共同代表を務めた日本保守党を百田尚樹代表と対立して離党、広沢市長も従った。政治的存在感を薄める河村氏から広沢市政が独り立ちできるか、今回のバリアフリーにどのように向き合うかが試金石になりそうだ。

※関連記事は本誌2023年6月30日号、24年10月11日号など。「週刊金曜日オンライン」で一部公開中。

(『週刊金曜日』2025年11月21日号)

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