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ニューヨーク市長選、低所得者向け政策掲げるマムダニ氏当選で民主党はどう変わる?

早尾貴紀・東京経済大学教員|2025年12月25日5:04PM


 11月4日に投開票された米ニューヨーク市長選挙で、ゾーラン・マムダニ氏(34歳)が当選した。6月の民主党予備選挙でマムダニ氏は勝利しており、民主党地盤の同市での勝利は順当なはずだが、しかし共和党のトランプ大統領を激怒させ、さらに民主党主流派にも大きな動揺をもたらしている。

 それはマムダニ氏の人物と政策とが、現在の米国の反動的な潮流に真っ向から反しているからである。その特徴を列記すると、①本人がウガンダ出身でインド系のムスリム移民であり、ニューヨークが移民の街であることを肯定している、②LGBTなど性的マイノリティの権利を擁護している、③イスラエルのガザ攻撃をジェノサイドと明言し、ネタニヤフ首相に対する国際刑事裁判所の逮捕状を執行すると宣言している、④民主社会主義者を自任し、大企業や富裕層への課税強化によって、低所得者層への再分配を政策としている、などである。

 これらの立場はすべてトランプ政権の方針(反移民、反LGBT、イスラエル支援、企業減税)と真逆であり、トランプ大統領は、マムダニ氏を「共産主義者の狂人」と罵り「市に対し連邦資金を削減する」と脅迫までしている。他方で、移民排斥・イスラム嫌悪が強まっている状況で、「イスラム過激派」という言葉まで投げつけられている。ほとんどパニックのような過剰な反応が、現代米国社会の問題を露呈させている。

民主党主流派にも反旗

 ここで注意すべきことは、選挙戦でマムダニ氏と票を二分して争った対抗者は同じ民主党のアンドリュー・クオモ元ニューヨーク州知事であって、共和党の候補ではない点だ。民主党の主流派は、非公式にしかし公然と、予備選挙で敗北したクオモ氏を推したのだが、それでも有権者はマムダニ氏の政策を支持したということになる。

 民主党内で主流派とマムダニ氏の大きな違いは二つある。民主党は先の大統領選挙で、そのエリート志向を嫌われて労働者層の票を失ったことが敗因につながったが、マムダニ氏は、住宅・育児・交通について低所得者向けの政策を打ち出したことで支持を得た。

 もう一つ、民主党は、イスラエル・ロビーと密な関係を持ち、ガザ攻撃も含めたパレスチナ占領を支援してきたのに対し、マムダニ氏は明確にガザ攻撃を批判している。ネタニヤフ首相に対して、「もしニューヨークを訪れたら、国際刑事裁判所から出された逮捕状を執行する」とさえ明言している。

 こうしてマムダニ氏は、共和党トランプ政権に対抗しているのはもちろん、民主党主流派にも反旗を翻し、そして支持を得た。その立場は「急進派」と呼ばれるが、実のところ「民主社会主義」はさほどラディカルな思想ではない。富裕層からの徴税で低所得者政策を行なうことは、資本主義国家の一般的な福祉政策にすぎず、共産主義でも何でもない。

 またマムダニ氏がイスラエルのジェノサイドを批判しているのは、国際法や国連機関の判断に沿ったものだ。イスラエル国家を否定しているわけではなく、イスラム過激派などではまったくない。

 翻ってこれは民主党が内部から変わる機会にもなりうる。政権交代で格差社会もイスラエル支持も変わらない状況では、民主党の存在意義は薄い。この選挙結果は、トランプ政権以上に、民主党に対し変革を迫るものになるだろう。

(『週刊金曜日』2025年11月14日号)

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