山梨リニア工事差し止め訴訟、控訴審も住民側の請求棄却 JR東海の主張「丸呑み」判決
井澤宏明・ジャーナリスト|2025年12月24日5:13PM
住宅地の真上を貫くリニア中央新幹線の巨大高架橋によって静穏な生活が破壊されるなどとして、山梨県南アルプス市の沿線住民6人がJR東海を相手取り、同市内約5キロのリニア建設工事差し止めなどを求めて起こした裁判の控訴審判決が10月22日、東京高裁で言い渡された。木納敏和裁判長は「工事自体を差し止めるべき違法な工事であると認めることはできない」などとして一審判決(※)を支持。住民側の控訴を棄却した。

「われわれの主張は無視され、JR東海の主張を踏まえ、結局はちゃんとやるだろうと締め括られている」と原告代理人の梶山正三弁護士が酷評したように、JR東海の主張を「丸呑み」した判決だ。
リニア路線は住民6人が所有する住宅や工場、農地を横切るか、至近距離を通る計画だ。裁判で住民は、リニア建設予定地になったため土地や建物の価値が下落してすでに精神的苦痛を負っていると主張。建設中や開業後に騒音、振動、低周波音、日照、電磁波の被害、眺望の喪失や景観の破壊などの公害が発生し、人格権や財産権を侵害されると訴えてきた。
これに対して判決は騒音について、建設中はJR東海が「各種の規制基準に従って、工事を実施するとしている」、開業後は「新幹線環境基準を遵守する形での騒音対策を講じるとしている」ことなどを挙げ「違法な工事だとは認められない」と山梨実験線での被害を無視。不動産価格の下落についても「リニア事業には国際競争力の向上や災害対策も見据えた国家レベルの大きな社会経済上の意義があり、高度な公共性・公益性がある」ので「不利益は、住民らの受忍限度の範囲にとどまる」と住民らを突き放した。米国でのリニア計画中止の現実も黙殺した形だ。
住民無念「不満しかない」
原告の秋山美紀さん(53歳)の場合、自宅から約2メートルの庭をリニア高架橋が斜めに横切る計画だ。JR東海から示されているのはリニア用地にかかる庭の角の買収と最長30年の「日陰補償」だ。
判決は、JR東海がリニア用地にかかる部分しか買い取らないとしていることについて「提示された条件をそのまま強制的に受け入れることが義務付けられているわけでも、提示された条件に再検討を求めたり、対案を提示したりすることができないとされているわけでもない」として「不法行為に当たるとは認められない」とした。
しかし昨年5月の甲府地裁判決後、JR東海職員の数年ぶりの訪問を受けた秋山さんは「条件は変わりません。気持ちは分かるが、秋山さんだけ特別にすることはできません」と告げられたという。
判決後の報告集会で秋山さんは「2回ともすべて棄却という結果には不満しかない」と言葉を振り絞り、最高裁への上告については「少し考える時間が欲しい」。今後も移転による補償を求め、JR東海の測量には応じないという。
この日の判決では冒頭、記者クラブ幹事社による法廷内撮影が、住民や傍聴者を法廷前で待たせたまま行なわれる失態もあった。映っているのは裁判官やJR東海側の代理人らだけ。6年半近い裁判を闘い、遠方からマイクロバスに乗り合わせて駆け付けた住民たちが、まるで欠席したかのようだ。
リニア差し止め訴訟は東京都(一審で住民側敗訴)や静岡県でも続くが、控訴審判決は初めて。JR東海は「裁判所において適切にご判断いただいたものと理解している」とコメントしている。
※一審判決までの経過は『週刊金曜日』2019年5月17日号、23年11月10日号、24年6月7日号などで既報。「週刊金曜日オンライン」で公開中。
(『週刊金曜日』2025年11月7日号)
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