〈アベノミクスの総括が必要だ〉宇都宮健児
宇都宮健児・『週刊金曜日』編集委員|2025年12月17日5:58PM

10月27日の東京株式市場の日経平均株価の終値は5万512円32銭となり、終値で歴史上初めて5万円台に乗せた。
株価の高騰は、10月21日に「責任ある積極財政」を掲げて発足した高市早苗内閣による経済政策に対する期待の表れといえる。しかしながら、株価が史上最高になったといっても、多くの国民にとっては景気回復を実感することができないのが実情であると思われる。
株価が高騰する一方で円安が進み、10月27日は円が一時1ドル153円台まで下落している。円安が進めば、輸入する食料品やエネルギー、原材料などの輸入コストが上昇するので、生活必需品の物価高騰につながることになり、国民生活がさらに圧迫されることになる。
高市首相は、10月24日行なった所信表明演説全体を通して、外交・安全保障政策や経済財政政策では安倍晋三元首相の路線を継承する立場を鮮明にした。
日本経済は長期間にわたって労働者の実質賃金が上がらず、経済も低迷してきたため、「失われた30年」と言われている。「失われた30年」のうち7年8カ月は、安倍政権下で「アベノミクス」と呼ばれた経済政策が行なわれた。しかしながらアベノミクスによっても経済の低迷は打開できず、現在に至っているのであるから、アベノミクスは失敗した経済政策だったと言える。
アベノミクスは、「大胆な金融政策」「機動的な財政政策」「民間投資を喚起する成長戦略」による経済政策を展開してきたが、日本経済の低迷を打開できなかったばかりか、現在の円安・物価高の原因をつくった政策にもなっている。
アベノミクスの「大胆な金融政策」による金融緩和で、大量の国債を発行するとともに低金利政策をとられてきた。大量の国債発行と日本と海外の金利差の拡大は円安の要因ともなっている。そしてアベノミクス以後も財源を国債発行に依存した積極財政が慢性化し、国債発行残高は今年度末には1129兆円になると言われている。
いずれにしても、アベノミクスによって企業収益の改善や株価の上昇をもたらしたが、実質賃金は上がらず、円安の進行で物価は高騰し国民の生活はさらに苦しくなってきているのである。
高市首相はアベノミクスを継承しようとしているが、同じような失敗を重ねないためにも、アベノミクスをしっかりと総括する必要がある。
(『週刊金曜日』2025年11月7日号)
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