被ばく「封じ込め」の正体とは? 古川恵子さんらジャーナリスト5人が問題を指摘
竪場勝司・ライター|2025年12月17日5:34PM
「被ばく『封じ込め』の正体~広島・長崎・ビキニ・福島の声から」と題されたトークイベントが10月18日、東京・千代田区の専修大学で開かれた。同名タイトルのブックレットが岩波書店から10月初めに発売されたことを記念した催しで、同書に共同で執筆した、核被害の取材を続けているジャーナリスト5人が登壇。放射性降下物による内部被ばくの影響が過小に扱われてきたことなどの、構造的な問題点を指摘した。

第1部は、長崎放送が2024年に制作したドキュメンタリー番組「夏空の灰~被爆体験者は何者か?」の上映。22年度に運用が始まった被爆者認定の新審査基準により、広島では爆心地から約40キロ離れた場所で「黒い雨」にあった人も被爆者と認められるようになったが、長崎では被爆地域が南北12キロ、東西7キロと狭く、これ以遠の地域で被爆にあった人たちは「被爆体験者」と呼ばれ、「被爆者」としては扱われていない。こうした格差はなぜ生まれてきたかを追ったドキュメンタリーだ。
ディレクターの古川恵子さんは「番組を作ろうと思ったきっかけは広島との差別。なぜこんなことになるのかと考えた時に、広島の市民の力+マスコミの力が背景にすごく作用しているなと感じた。今の長崎には被爆体験者の取材を続けている人がどれだけいるのかという反省の思いを込めて、私もやってみようと考えた」と語った。
「専門家」責任問う声も
第2部のシンポジウムでブックレットを書いた小山美砂さん(フリージャーナリスト)、古川さん、白石草さん(OurPlanet―TV代表)、笹島康仁さん(フリージャーナリスト)、田井中雅人さん(『朝日新聞』記者)が順番に登壇した。
小山さんは「広島から~黒い雨地域と裁判」をテーマに報告。「黒い雨」訴訟で国側が主張した「内部被ばくは外部被ばくに比べて大したことがない」「100ミリシーベルト以下ならリスクはない」との論理を「二つの神話」と批判。この「神話」が被ばく「封じ込め」の根拠となっていると指摘した。
笹島さんは「ビキニから~元船員と健康被害」をテーマに報告。核被害の問題は①情報が隠されている②被害者たちが分断されている③救済制度に被害者が関与できていない、の3点に集約されるとしたうえで「情報を表に出し、それを記録し続けていくことがジャーナリストの仕事だ」と語った。
田井中さんは「『放射線被曝の歴史』中川保雄氏が伝えたかったこと」と題して、神戸大学の教授だった故・中川氏の著書を紹介。同書のキーメッセージは「世界中の核被害者が切り捨てられている根本に放射線被ばく防護の基準がある」と指摘した点だと解説。「それは核原子力開発のため、被ばくを強制する側が『被ばくはやむを得ないもの、我慢して受忍すべきもの』と強制される側に思わせるよう、科学的な装いをこらしてつくった社会的基準だ」と訴えた。
白石さんはパネルディスカッションで広島・長崎で被爆した生存者を対象に被爆と病気の関係を追跡調査してきた「寿命調査(LSS)」の研究結果が「『100ミリシーベルト以下は健康影響が認められていない』という国際的な合意に結びついている」と指摘した。パネルディスカッションでは被ばく「封じ込め」に影響力を持つ放射線などの「専門家」の責任を問う声も上がった。
(『週刊金曜日』2025年10月31日号)
定期購読はこちらをクリック







