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「日韓合意で長生炭鉱の遺骨と遺族のDNA鑑定実施へ」 市民団体は12月19日に期限設定

本田雅和・ジャーナリスト|2025年12月17日5:22PM


 山口県宇部市の海底炭鉱跡で、アジア太平洋戦争中の水没事故被害者の頭蓋骨などを発見・収容した市民団体「長生炭鉱の水非常を歴史に刻む会」の井上洋子・共同代表らは10月21日、同炭鉱に強制連行された朝鮮人25人と日本人4人=計29人分の事故死者の遺族のDNA型データ31件を、警察庁の求めに応じて阿部大輔・検視指導室長に手渡した。

「刻む会」の井上洋子代表(マイク中央)と国会議員に対し、外務省幹部らの国側は山口県警で実施されることも「未定」とし、公務員である自分たちの撮影も拒否。記者の質問にも応じず、報道への規制と拒否を貫いた。参議院議員会館講堂で。(撮影/本田雅和)

 刻む会は、ごみなどに埋もれていた炭鉱坑道入り口を昨年9月に掘り当てて以降、伊左治佳孝ダイバーらの協力で死者183人の遺骨探索を続けてきたが、今回提出されたDNA型データは、同会が遺骨の身元照合用に韓国の遺族会などの協力も得て集めてきたものだ。遺骨探索調査の立ち会いなどで現地に来た3親等内の遺族らに鼻腔や咽頭付近を綿棒で拭う形で採取した検体をコンピューターでデータ処理したものだ。

 刻む会は8月25、26日に頭蓋骨と足の骨など4片を収容して宇部署に届け出て提出していたが、当時もその後も宇部署や国側に速やかなDNA鑑定を求めていた。

 10月15日になってようやく宇部署刑事課長から井上代表に電話が入り、「警察庁が宇部まで出向くのでDNA型データを共有させてほしい」と申し入れがあった。刻む会は21日に対政府交渉が予定されており、警察庁幹部も来るので、「当方から持参し、そのときに手渡す」ことで合意していた。

 刻む会としては当然、「DNA鑑定が間もなく始まる」と期待。来年2月以降は世界各国の著名ダイバーも参加して遺骨収容が画期的に進む見通しだ。「発見された遺骨の身元特定が大きく進む」と遺族らも注目している。今回の場合、一般的な遺骨・遺族間でのDNA鑑定とは異なり、他に死者183人の名簿と、韓国政府による80人以上のDNA型データもある。そのため全体の半数近い犠牲者の身元が明らかになる可能性もある。

日本、実施機関決まらず

 しかし、当日の対政府交渉が始まると、特に警察庁幹部と外務省幹部は「韓国政府と意思疎通をしているが、外交関係のことで相手があるので詳細は言えない」「鑑定方法も実施機関も、日韓のどちらが鑑定をやるかどうかも分からない」「いつごろ鑑定できるかスケジュールも言えない」などと不誠実な発言が続いた。が、1カ月前に約束した韓国のDNA鑑定方法(STR法)の確認さえしていないことのほか、情報の隠蔽だけでなく、虚偽答弁までが判明した。

 刻む会メンバーは、最近も訪韓して韓国政府行政安全部幹部と交渉し、韓国が採用している鑑定法はSTR法であることなどの確認をしていたため、参加者らの怒りが爆発。交渉はさらに紛糾した。

 山口県警本部は刻む会から提供された遺骨については本部の冷蔵庫に保管されていると明らかにしており、DNA鑑定は県警と宇部署でやることになることを県議会でも示唆しているとし、警察庁幹部もこれは否定せず、日本政府としては「韓国との合意ができればDNA鑑定はする」との方針を初めて公式に認めた。刻む会の上田慶司事務局長は「12月19日」を期限として設定し、それまでに政府が鑑定を終了しない場合は刻む会が主体となって民間の調査機関で身元特定を進めると宣言。井上代表は官僚らに来年2月の84周年の追悼式には「人間の心を持った者としての参加」を求めた。

(『週刊金曜日』2025年10月31日号)

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