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〈善悪の二分法〉想田和弘

想田和弘・『週刊金曜日』編集委員|2025年11月24日2:41PM

想田和弘・『週刊金曜日』編集委員。

 ドナルド・トランプの熱烈な支援者で、若い世代に影響力のある極右活動家チャーリー・カーク氏が、大学での講演中に銃で暗殺された。

 決して起きてはならぬ、痛ましい事件である。同時に許しがたいのは、彼の死を政治的に利用しようとする者たちだ。

 その先頭に立ったのは、残念ながらというべきか、案の定というべきか、ドナルド・トランプである。容疑者が右派の家庭で育ち、単独犯であることが濃厚であるにもかかわらず、トランプは事件を左派の責任だと決めつけた。そして、ファシズムに反対する分散型の運動「アンティファ(Antifa)」をテロ組織に指定するための大統領令に署名、アンティファに資金援助をする人間や団体も念入りに調査すると宣言した。

 今のところ、容疑者がアンティファと関わりがあったという形跡はない。また、指導者も会員も組織もない、団体というよりはイデオロギーにすぎぬアンティアをどうやってテロ組織に認定するのか、専門家からは疑問の声が上がっている。

 だが、そんなことはトランプにはどうでもよい。彼にとって、アンティファをテロ組織と認定するのは、自分を批判する「敵」を威圧し、黙らせ、迫害するための口実にすぎないからである。

 実際、マッカーシーによる赤狩りでも、スターリンによる粛清裁判でも、ドゥテルテによる麻薬組織撲滅運動でも、追及の対象者が実際に“シロ”か“クロ”かなど、どうでもよかった。アンティファのように組織的実態がない運動を対象にすることは、網にかける対象を際限なく恣意的に広げられるという意味では、トランプにはむしろ好都合かもしれない。

 僕が苦々しく思い出すのは、2001年、同時多発テロが起きた際に米国大統領だったジョージ・W・ブッシュが放った言葉である。

「あらゆる地域のあらゆる国家はいま決断を下さなければならない。われわれの味方になるか、それともテロリストの側につくか」

 あのとき米国民の大半は、右も左も、ブッシュが唱えた単純な善悪の二分法に同調し、無差別大量殺人とも言える凄惨な対テロ戦争を開始した。トランプらはいま同じ二分法を国内に当てはめ、矛先を米国民に向けようとしている。思えば、米国社会は対テロ戦争に限らず、この二分法を長年好んで唱和してきた。したがってそれを超越する論理を持ちうるのかどうか。僕は悲観的である。

(『週刊金曜日』2025年10月10日号)

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