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埼玉県川口市議会が非正規滞在者取り締まり強化求め意見書採択 「議会によるヘイト」続く

石橋学・『神奈川新聞』記者|2025年11月24日3:42PM


 ある日、埼玉県で赤信号を無視した車が人をはねる事故が発生。不注意によるものだったが、なぜか運転手が神奈川県出身であることが原因にされてしまう。神奈川の人間はルールを守らない危険な存在とみなされ、特別な取り締まりが始まる――。

9月30日、川口市議会で「不法滞在者ゼロプランの着実な実行等を求める意見書」を読み上げる自民党の吉田英司議員。(撮影/石橋学)

 もしそうなったら922万人の神奈川県民は一つの事故で一括りにするのはおかしいと反発するだろう。もちろん、現実にそんな乱暴な措置は取られない。ところが日本国外で生まれ育った人や外国にルーツを持つ人に対しては、その理不尽がまかり通ってしまう。外国人は法律を無視する道徳的に劣った存在だと見下す差別にもとづくもので、民族や国籍といった属性で人間の善しあしを判断するレイシズムに他ならない。

 そうしたヘイト意見書が9月30日、埼玉県の川口市議会で賛成多数により採択された。「不法滞在者ゼロプランの着実な実行等を求める意見書」「外国人による交通事故の防止と被害者の保護・救済措置を国に求める意見書」だ。

 明示されていないが、同市内に多く暮らす在日クルド人を地域に害をもたらす危険な存在とみなし、収容施設に閉じ込めたり、罰則を特別に強化したりすることを国に求めるもので、その人権無視ぶりは異常という他ない。

 いずれも自民党が提案し、採決では公明党や日本維新の会、参政党の議員らが賛成した。意見書の内容もさることながら、差別を正当化する各党の言いぐさが輪をかけて醜悪だった。

 賛成討論に立った自民党の杉本佳代議員は「一部の外国人による法令遵守意識の希薄さや不法行為の取り締まりの甘さがある」と述べ、差別と、外国人は優遇されているとのデマを議場に広めた。公明党の石橋俊伸議員も「生活習慣の違いによる外国人のゴミ出し問題や、騒音などのマナー違反など、至るところで問題になっている」と、日本人でも起こし得る、非正規滞在とは無関係なトラブルをあげつらった。

「差別助長の政策」に反対の声も

 反対討論は正論が光った。共産党の松本幸恵議員は「非正規滞在者には難民やさまざまな事情で在留資格がない人たちがいる。不法と一括りにして排斥する策は排外主義と訴える声もある」と指摘。「国連から『非正規』と表現するよう要請されているにもかかわらず『不法滞在者』と言い続け、差別を助長する政策の推進を、川口市議会が公に求めてはならない」

 立憲民主党系の今田真美議員も「最大の問題は事故原因を外国人という属性に結びつけ、全体が危険運転をしているかのように描いている点にある。警察庁の令和7(2025)年上半期の統計では全国の交通事故死亡者数は1161人。うち外国人が起こしたのは22件。比率では2%未満」と説明。意見書は偏見を広げ、市民社会の分断を助長するものだと断じた。

 どちらに理があるかは明らかだが、改めて浮き彫りになるのは何が差別に当たり、なぜその差別は許されないかという規範の欠如だ。

 川口市議会は23年6月に「一部外国人による犯罪の取り締まり強化を求める意見書」も採択しており、議会によるヘイトが甚だしい。クルド人ヘイトが横行するようになって以降、差別を禁じてヘイトスピーチを規制する条例を求める声は市民から上がるが、本来なら差別をなくす立場にある議会によるヘイトこそは、法規制の必要性をなおさら物語っている。

(『週刊金曜日』2025年10月17日号)

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