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クルド人ヘイト〝過去最悪〟の実態を訴訟・支援集会で訴え 参院選後に状況が急速に悪化

石橋学・『神奈川新聞』記者|2025年11月24日3:13PM

 ヘイトデモによってクルド人が平穏に暮らす権利を侵害されたとして一般社団法人日本クルド文化協会(埼玉県川口市)が神奈川県海老名市のレイシスト、渡辺賢一氏に損害賠償を求めた訴訟の第3回口頭弁論が9月24日、さいたま地裁(真辺朋子裁判長)であった。

閉廷後の支援集会で窮状を訴えた日本クルド文化協会のシカン・ワッカス代表理事。(撮影/石橋学)

 弁論に先立ち、審理を迅速に進めるよう原告弁護団が提出した申述書が窮状を映し出していた。

「クルド人に対するヘイトスピーチが社会に蔓延し、過大な時間を費やした場合、その間に、深刻な被害がさらに発生、拡大することが必至の状況である」

 訴えの変更も行ない、渡辺氏がクルドの春祭り「ネウロズ」に押しかけ「テロをたたえる祭りをするな」「不法滞在は犯罪だ。即刻強制送還せよ」などとでたらめなヘイトスピーチを連発した被害も追加した。さまざまな形で広がる差別行為にできるところから歯止めをかけたいとの切実さが滲んだ。

 閉廷後の支援集会で、原告のシカン・ワッカス代表理事がマイクを握った。レイシストの攻撃に加え、出入国在留管理庁(入管庁)が打ち出す人権無視の「不法滞在者ゼロプラン」による強制送還に直面し「同時に両方と闘うのは厳しい」「13歳で来日してから21年になるが、状況は今が一番ひどい」と声を落とした。

 別のクルド人男性も「日本生まれの子どもは日本語とクルド語しかわからない。(国籍国の)トルコに帰されて、どうやって生活するというのか」と嘆いた。父親だけが送還されるケースもあり、家族離散の恐怖も広がる。

「刑務所にいるのと同じ」

 参政党や自民党など各党が排外主義政策を競い合った7月の参院選を境に状況が急速に悪化した。日本クルド文化協会に「出ていかないならクルド人は皆殺しにする」「クルド人を1人ずつ殺していく」という脅迫メールが相次ぐ。小学生が日本人の大人に肘で突かれ、「法律がなければ、お前らなんかぶっ殺してやるよ」と脅された。

 政策面でも難民認定を待つ仮放免の人は「住所確認の厳格化」を理由に運転免許の更新ができなくなった。「10年もつきあったクレジット会社からローンを断られた。命を守るはずの病院でも何で来たのかと嫌な顔をされる」とシカンさんは言う。「昔はできたことができなくなり、仮放免の人たちはもう死んでもいいみたいな気持ちになっている。どの道も閉ざされて皆あきらめてしまう。車も使えず家に閉じこもっていろというのなら刑務所にいるのと同じだ」

 激化するクルド人ヘイトについて原告弁護団の師岡康子弁護士は「公人による差別煽動と政策による悪影響が大きい。自民党は総裁選でも外国人差別の政策を競って打ち出している。クルド人や非正規滞在の人には何を言っても、何をしてもいいとお墨付きを与えたと受け止められ、ヘイトスピーチがひどくなっている」と説く。埼玉県の大野元裕知事がクルド人の入国制限につながるトルコのビザ免除一時停止を要望した途端、クルド人経営の飲食店に「大野からも見捨てられたな。強制送還されて出ていけ。日本のごみ、死ね」という電話があったという。

 集会には国会議員も参加。ヘイトスピーチ解消法制定に尽力した立憲民主党の有田芳生衆議院議員は「野党までが当たり前のようにクルド人ヘイトをする深刻な状況だ」。同党の石橋通宏参議院議員も「共生社会をつくるための法整備が必要だ」と力を込めた。

(『週刊金曜日』2025年10月10日号)

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