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戦後80年の「JCJ大賞」は安田浩一さんに 差別と偏見なくす社会を求めて

古川英一・JCJ事務局長|2025年11月24日3:07PM

「畜生やりやがったな、なめるな」

 との一声に会場の参加者は一瞬驚いた様子だったが、スピーチはさらに「その感覚を失うとメディアは権力の広報機関に成り下がってしまう」と続いた。発言したのは安田浩一さん。9月27日に東京・水道橋で開かれたJCJ(日本ジャーナリスト会議)賞贈賞式の一コマだ。

9月27日のJCJ賞贈賞式。安田浩一さん(前列中央)ほか受賞者と松原文枝さん(後列右端)が記念撮影に臨んだ。(撮影/古川英一)

 JCJが優れたジャーナリストを顕彰する同賞の第68回(2025年)には6作品が選ばれた。このうち「JCJ大賞」を受賞したのが昨年『地震と虐殺 1923―2024』(中央公論新社)を上梓した安田さんだ。「差別と偏見をなくすことはジャーナリズムの大事な働きの一つ、虐殺の時代を繰り返すことがない社会を一緒に作っていくとの筆者の思いを共にしたい」としてJCJは同作を大賞に選んだ。これに対し安田さんは「私たちの社会にはこれまでもレイシズムがあり、その一つが関東大震災での虐殺だ」と指摘のうえ「虐殺は人間、地域、社会を壊す。この問題を10年間考え続けたが、単なる記録、証言集にしたくないと思う一方、証言者がいない中ではたしてノンフィクションとして書けるかどうかも悩んだが、地道に現地に足を運び、風景を見た」と思いを語った。

 大賞以外に今回は「JCJ賞」として以下の作品が選ばれた。

▼被爆80年企画「ヒロシマドキュメント」(中国新聞社取材班)

▼「沖縄戦80年 新しい戦前にしない」キャンペーン報道(琉球新報社取材班)

▼一連の鹿児島県警情報漏洩事件の報道 ドキュメンタリー「警察官の告白」(鹿児島テレビ放送取材班)

▼選挙運動費用・政治資金をめぐる一連の報道と、「選挙運動費用データベース」の構築(調査報道グループ・フロントラインプレスおよびスローニュース)

「JCJ特別賞」には萩原健さんの著書『ガザ、戦下の人道医療援助』(ホーム社)が選ばれた。

ネットメディアが初受賞

 贈賞式では、ドキュメンタリー映画『黒川の女たち』の監督でテレビ朝日社員の松原文枝さんが記念講演。戦時中の性暴力による被害体験を満蒙開拓団の女性たちが自ら語り始めた勇気に触れ、「過去を引き受けることが未来を切り開く」「為政者による歴史の書き換えをさせてはいけない」と訴えた。

 受賞者スピーチで中国新聞社の水川恭輔さんは「あの日きのこ雲の下にいた人々の目線から、市民、被爆者の声をわが事として、地続きの歴史として伝えたかった」。ウクライナやガザの戦闘で核が使われる危機感、被爆者の高齢化が連載の原動力になったと述べた。

 琉球新報社の中村万里子さんは日本のアジア侵略の最後が沖縄戦で、沖縄は被害者でもあり加害者でもあるとの視点から「歴史を理解し今の社会に生かす、学びながら解決策を導き出す報道を終わらせることなく、沖縄の平和の心を伝えていきたい」と決意を述べた。

 今年は初めてネットメディアから受賞作が生まれた。フロントラインプレス代表の高田昌幸さんは「SNSは噓を言った者勝ち。その中でジャーナリズムの大きな柱は噓と噓ではないものとを区別していくことにある。そのためには取材プロセスをすべて明らかにすることが大事だ」と語った。

 今年は戦後80年と同時にJCJ発足70周年でもある。受賞者から受け取った「底力」を肝に銘じ、JCJとしてもジャーナリズムと市民の仲立ちとなる活動に一層力を入れていきたい。

(『週刊金曜日』2025年10月10日号)

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