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ミャンマーで銃撃された長井健司記者の「最期の言葉」が判明

明石昇二郎・ルポライター|2025年11月24日2:54PM



 2007年9月、ミャンマー(ビルマ)の最大都市ヤンゴンで民主化デモの取材中、軍に銃撃されて亡くなった日本人ジャーナリストの長井健司さん(享年50)。撃たれてもなお手放さなかったビデオカメラと、そこに収められていたテープが遺族のもとに返還されたのは、事件からおよそ16年が経過した23年4月のことだった。

会見するAPF通信社の山路徹代表(右)と、日本音響研究所の鈴木創所長。9月24日、東京都内で。(撮影/明石昇二郎)

 長井さんが所属していたAPF通信社が検証したところ、同社で把握しているカメラの製造番号と一致。カメラは「長井さんのもの」であることが裏付けられた。しかしテープをチェックすると、長井さんが銃撃された直後の映像が含まれておらず、そこには、長井さんが撮影したものとはまったく別の真っ黒な画面が上書きされていたのである。

 テープは警視庁の科学捜査研究所や警察庁の科学警察研究所などで分析を行なったものの、銃撃犯の特定に至るような事実は見つからず、新たな発見もなかった。

 そこでAPF通信社では、テープの製造元や、音響解析が専門の「日本音響研究所」などに協力を要請。テープに残されていた映像や音声を詳しく分析した。その結果、ノイズに阻まれて不明瞭だった長井さんの〝最期の言葉〟が、最新の音声分析により、特定されたのである。

 その分析結果について9月24日、APF通信社の山路徹代表らが東京都内で記者会見を開き報告した。

 カメラに収められていたのは60分テープ。そのうち、6分40秒間に映像と音声が記録されていた。内訳は、長井さん本人が撮影した部分が5分7秒で、残りの1分33秒が長井さんの死後、何者かが上書きした映像である。テープに残されていた映像と音声は、長井さんが銃撃される6秒前で突然途切れていた。山路さんは語る。

「長井さんが最後、命と引き換えに記録して皆さんに伝えたかったのはどんな映像だったのか。自分たちとしては、これをとにかく知りたかった」

消された「決定的瞬間」

 音声解析の結果、記録されていた長井さんの最期の言葉は、日本語で、

「とりあえず、戻ろう」

 というものだった。

 映像を見ると、この言葉の直前に長井さんのほうに向かって少年が駆け寄ってくるシーンがある。最期の言葉は、これにかぶせるような形で記録されていた。

「少年に向かって言ったのか。映像は、この後に地面のほうを向くんです。おそらく彼の性格からすると、手を引くとかして、駆け寄ってきた少年を助ける。映像(撮影)はもう抜きにしたんじゃないか」(山路さん)

 さらには、黒い映像の部分で波形が異なっていたことも判明。同通信社の針谷勉さんは、「長井さんのカメラは決定的瞬間を捉えていた可能性がきわめて高く、その映像が何者かによって消されたと考えざるを得ません」と話す。銃撃犯の顔や姿が記録されていたからこそ「消された」というのだ。

 黒い映像が上書きされた「決定的瞬間」の復元を試みたものの、メーカーや専門家は「技術的に困難」だとして実現できていない。山路さんたちは会見の最後に、「長井さんが最期に何を伝えたかったのかをどうしても明らかにしたい」として、専門家に映像復元への協力を呼びかけていた。

(『週刊金曜日』2025年10月10日号)

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