埼玉県行田市「スタバ出店問題」で市が反対住民に無断で「署名撤回届」作成か
木下寿国・ライター|2025年11月24日2:23PM
市有地への大手コーヒーチェーン店出店に反対署名を行なった市民を埼玉県行田市長らが戸別訪問していた問題で、反対署名の発起人には身に覚えのない「発起人撤回届」と「署名撤回届」を、市が作成していたことがわかった。市民の情報公開請求によって明らかになった。住民証言によると、市長らは個別訪問の際にA4判の白紙3枚をこの発起人に差し出して署名させた経緯がある。委任する内容を具体的に明示しない「白紙委任」だった疑いが強まった。

行田市は、スターバックスコーヒージャパン(以下、スタバ)を市有地である公園内に誘致しようと計画。これに対し、同地に立つ公民館をサークル活動などで利用していた市民らから駐車場が半分に減らされ使いづらくなるなどの不安の声が上がった。市民らは計画反対の署名活動を行ない、市とスタバに要望書を提出。スタバと市は計画の中止を発表した。この過程で、市は戸別訪問を行ない、署名発起人に白紙委任などを求めていた疑いが持ち上がった(本誌7月25日号に既報)。このような対応に疑問を覚えた発起人の堀口充子さん(89歳)らが市に保有個人情報の開示請求などを行なったところ、市は、「発起人撤回届」および「署名撤回届」を開示した。
元発起人「書いてない」
堀口さんはこれらを書いていないと明言している。つまり、堀口さんが氏名などを書かされた白紙の上に、市が上記の文章を上乗せして作成した可能性がきわめて高い。市側は、筆者の問い合わせに白紙委任は強要していないと回答していたが、これがほぼ虚偽であったことはもはや明白だ。
堀口さんは損害賠償金の支払いを持ち出され脅しに屈した形で白紙に署名させられていた。反対署名の関係者らが8月30日に開いた経過報告会では、堀口さんが「白紙署名が何に使われるのか、不安と恐怖でその夜は眠れなかった」と吐露した。同時に、発起人でありながら結果的に立場を変えることになり、署名者に「申し訳のないことをした」と後悔の念を口にした。市は違法ともいえる行為によって、善意の市民を追い詰めたのだ。
報告会では市への疑問や批判が相次いだ。「忍・行田公民館の駐車場を守る会」の小林順子さんは、市が独断で計画を始めたと批判した。この間、「あなたが自殺しなきゃいいけど」「まちを歩けなくなるぞ」などの脅迫電話も受けたという。結果的には会を解散したが、それは市側が言うように会の目的が達成されたからではなく、市長後援会の人物から、市は提訴の準備をしていると伝えられたからだという。あわてて解散届を市に提出したものの、堀口さん同様「提訴の脅しに屈してしまったが、解散すべきではなかったと後悔している」と述べた。
市は戸別訪問した理由を、計画では署名者側の主張とは逆に駐車台数は増えるのだから、それを説明するためだったとしているが、「行田市のスタバ問題を考える会」は、新たな駐車場を建設しても総台数は減る、誤っているのは市のほうだと反論している。
小林さんも「増設の計画が出されたのは、私たちが署名を出した後。署名を撤回させるために拙速に考えたものだと思っている」と市のやり方を批判した。
「行田の明日を考える会」の松井秀二郎さんは「公園や公民館は市民のもの。市が好き勝手に何をやってもよいというものではない。そこを直していかないとまた同じことが起きる」と注意喚起した。
(『週刊金曜日』2025年10月3日号)
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