スリランカ人ウィシュマさん入管死亡事件 診察した医師の判断に遺族ら憤り
井澤宏明・ジャーナリスト|2025年11月24日1:14PM
名古屋出入国在留管理局(名古屋入管)で収容中の2021年3月6日に亡くなったスリランカ人女性、ウィシュマ・サンダマリさん(当時33歳)の遺族が起こした国家賠償請求訴訟の第19回口頭弁論が9月3日、名古屋地裁(大竹敬人裁判長)で開かれ、国側は入管内でウィシュマさんを診察した非常勤医師の陳述書を提出した。

訴状によると、20年8月20日から収容されたウィシュマさんは遅くとも翌21年1月18日ごろには摂食困難となり、2月15日の尿検査で「ウロビリノーゲン3+」「ケトン体3+」「蛋白質3+」を示した。これは「飢餓状態」で電解質異常や腎機能障害を起こしている可能性を意味するのに、本人や支援者が再三求めた点滴や入院、一時的に収容を解く「仮放免」も許されないまま死亡した。
これに対して、今回の陳述書で医師は、「ケトン体3+」という結果が「低栄養の状態を示唆する要素となると認識している」とし、さらに「重篤な脱水や低栄養の状態になると、意識障害が生じたり、血圧が低下したり、皮膚が乾燥したりすることがある」と説明。
一方で、3日後の2月18日の診察でウィシュマさんに意識障害がなかったことや、看護師などから嘔吐はするものの食事や経口補水液は摂取していると聞いていたことなどから、「重篤な状態(重症)に至っているとは考えなかった」と、当時の判断を振り返った。
国が21年8月に公表した「調査報告書」でこの医師は「2月18日の診療時に尿検査結果を把握したかどうかの記憶は定かではないと(中略)述べている」とされていたが、陳述書では「私が2回目(2月15日・筆者注)の尿検査の結果を認識していないという可能性は考え難いと思う」と訂正した。
さらに、「私だけではなく、医学教育を受けている看護師等の医療従事者もウィシュマ氏の様子を日々見ていたのであり、仮に、急を要する状態であれば、看護師等から私に報告をしてくることもあると思われるが、そのような事情もなかった」と釈明してみせた。
収容された部屋を真上から撮影した監視カメラ映像にも「点滴をお願い」と職員に懇願するウィシュマさんの声が記録されているのにもかかわらず、陳述書では診察時に「点滴をしてほしいなどの要望はなかった」と繰り返し記述。
「私の判断は、診療時のウィシュマ氏の状態や各検査結果、他の医師の判断を踏まえたもので、各時点で私が把握していた情報を前提とすれば、不合理なものではなかったと考えている」と主張した。
監視映像公開訴訟も提起
原告で妹のワヨミさんは閉廷後の記者会見で「『ケトン体3+』が出ているのに、それ以上の検査をせずに判断するなんて、医者として資格があるのか疑問に思った」と憤りを露わにし「患者が点滴をしてほしいと求めるのではなく、医者が判断をすべき」と批判した。
提訴から3年半余り、12月からは証人尋問が予定されている。12月4、11日は今回の医師、同月24日、来年1月14、28日には原告、被告に協力している医師計3人が尋問に応じる。原告は当時の名古屋入管局長や看護師らへの尋問も求めているが、国は応じていない。
証拠となる監視カメラ映像についても原告は計約295時間分すべての公開を求めているが、国は約5時間分を提出しただけ。原告は5月、映像を開示しないのは違法だとして東京地裁に提訴。
(『週刊金曜日』2025年9月26日号)
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