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長生炭鉱跡での遺骨発見後、市民団体が初の対政府交渉 早期のDNA鑑定を
本田雅和・記者|2025年11月4日5:16PM
山口県宇部市の市民団体「長生炭鉱の水非常を歴史に刻む会」の井上洋子・共同代表らは9月9日、海底坑道での遺骨発見・引き揚げ後、初の対政府交渉を国会内で行ない、緊急・早期のDNA鑑定作業に着手するよう迫った。交渉には初めて警察庁の実務担当幹部も参加。刻む会側も「遺骨の身元確認=本人特定への国の前向きな姿勢の現れ」と評価していた。

しかし、遺骨の発見・届け出を受けて遺骨を冷蔵庫に保管したままの山口県警を統括する警察庁の刑事局幹部は、朝鮮人労働者が83年前の「水非常(海底炭鉱水没事故)」の犠牲者183人の7割を占めることから、DNA型鑑定の日韓警察当局の方法論の違いや、検体からDNA試料を抽出する過程での骨の切断や破壊の可能性など、「困難の理由ばかり」を列挙する一般論の説明に終始。刻む会メンバーや同席していた国会議員らの間に反発やいら立ちが拡がり、最終的には、警察庁も「外務省と連携して韓国政府などと協議する」ことには言及。外務省幹部が国内での知見の共有や韓国側との協議は「できるだけ速やかに進めたい」として収拾させた。
井上共同代表は「ご遺族も高齢化が進んでいる。遺骨は一刻も早く、故郷の親族のもとに返すのが私たちの務め」と話し、警察に対しては「遺骨発見・届け出から2週間以上経ってもDNA鑑定については何の連絡もない」と不信と怒りをあらわにした。地元の宇部署は山口県警に一任し、県警は警察庁に指示を仰ぎ、警察庁は外務省に判断を求めるという「たらい回し」が実態。業を煮やした刻む会は、保有する照合用DNA試料を自ら山口県警に持ち込んで、鑑定促進につなげる方針を表明。同席した国会議員らも警察庁に山口県警に受け入れ指導するよう求めた。
伊左治氏と18日に再協議
「安全性が担保できない」との主張で潜水調査も、さらには現地視察さえも拒んできた厚生労働省の村田裕香・人道調査室長らは同日も基本姿勢は変えず、海面に突き出た排気筒=ピーヤの内部のがれき撤去やダイバーの緊急用予備タンク設置費用など「安全性確保のための予算措置3500万円」や技術支援なども頑なに拒否した。
村田室長は「そもそも安全性に懸念がある潜水調査の実施に国がおカネを出すことはできない」とし、ピーヤ内部の掃除も「潜水行為の前提となる一体の作業」なので「これを認めれば安全性の知見がない潜水調査を進めることになる」との理屈を展開した。しかし一方で、現場の水深40メートル以深の深海潜水の経験と専門知をもつ伊左治佳孝ダイバーに対し3回目の、あらためての面会聴取を9月18日にすることでは、合意した。
刻む会は同日、厚労省に要請していた潜水調査の安全対策予算措置も拒否されたことを受け、「3500万円あれば、あと2~3回の潜水調査や遺骨収容作業が可能」と判断。「国の支援が得られなくとも自力で日本の市民の戦後責任の使命を果たす」と、新たな募金=第4次クラウドファンディングの開始を含めた2026年度活動計画を発表した。
来年2月7日に現地で予定している「84周年追悼集会」前後を皮切りに、フィンランドのミッコ・パーシ氏ら5カ国・地域から世界的に著名な海外ダイバー5人の応援を得て、2月12日まで潜水と遺骨収容活動などを継続する。
(『週刊金曜日』2025年9月19日号)
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