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関東大震災で虐殺された朝鮮人ら追悼に過去最多700人

桜井泉・ジャーナリスト|2025年11月4日4:42PM

 朝鮮半島には、プンムル(風物)という民俗芸能がある。ケンガリと呼ばれる鉦、太鼓の一種のチャンゴやプクを打ち鳴らし、体を強く動かして練り歩く。農民たちが豊作を祈り、収穫を祝い、自然の恵みに感謝する踊りだという。

独特のリズムで躍動感にあふれるプンムル。(撮影/桜井泉)

 プンムルが東京・墨田区の荒川河川敷で毎年9月初めに繰り広げられるようになって30年近くになる。1923年の関東大震災では関東一円で「井戸に毒を入れた」などという根拠のないうわさが広がり、朝鮮や中国などの人たちが日本の官憲や自警団の住民らにより虐殺された。ここも現場の一つで、遺体は近くに埋められたという。プンムルは市民による追悼式のフィナーレで披露される。その様子を描いた絵本『荒川河川敷のプンムル』(解放書店)(※)が完成した。

 作者は地元に住む渡辺つむぎさん(52歳)。プンムルを習い、15年ほど前から追悼式に参加してきた。絵本は、色鮮やかな衣装をまとい、輪になってプンムルを踊るたくさんの人々を、近くから、そして遠くから描く。朝鮮の山や村の風景、朝鮮の人たちに愛されているムクゲの花も描かれている。

 大学で油絵を専攻した渡辺さんは、「みんなで一つのものをつくるのがプンムルの魅力」という。「仲間の活動を子どもたちや若者に知ってもらいたい。加害の歴史を忘れてはいけない」と絵本をつくった。

 文章を寄せたのは韓国籍の在日朝鮮人2世で「トッケビプンムル」の代表を務める慎民子さん(75歳)。トッケビとは、お化けのことだが、日本と違い愛嬌がある。追悼式には福島や神奈川、埼玉などのプンムルのグループも参加するようになった。多くは日本人だ。

「排外主義への危機感」

 なぜ追悼の場でお祝いのプンムルを踊るのか。慎さんは韓国から来た人にそう聞かれることもある。そのときは、こう答える。

「殺された人たちは名前も顔も、どこに眠っているかもわからない。日本に働きに来た人たちは、ほとんどが農民だった。懐かしいプンムルを見て聞いて、遠く離れたふるさとを思い出してほしい」

 今年の追悼式は9月6日だった。1982年に初めて開かれたが、これまでで最多の700人余りが参加した。近くの京成電鉄八広駅から、次々と人々が降り立つ。花束を手にする人もいる。2009年に市民たちの手でつくられた、土手の下にある追悼碑に手を合わせ、河川敷に向かう。

 東京都の小池百合子知事は17年以降、虐殺された朝鮮人の追悼式に追悼文を送るのをやめた。7月の参院選では「日本人ファースト」を掲げる参政党が躍進。外国人へのヘイトスピーチも依然として横行している。渡辺さんは「排外主義などへの危機感が、多くの人に足を運ばせているのでしょう。若い人も増えています」という。

 河川敷では無数の赤とんぼが舞う。プンムルのにぎやかな音がいつまでも響いていた。

※『荒川河川敷のプンムル』は本体価格1600円(税別)。問い合わせは解放書店(電話03-5603-1861)へ。

(『週刊金曜日』2025年9月19日号)

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