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沖縄・与那国町長選は〝自衛隊票〟狙った現職を破り新人が当選 配備増強には「慎重」

西村仁美・ルポライター|2025年10月16日3:52PM



 任期満了に伴う沖縄県与那国町長選挙は8月24日に投開票され、無所属新人の上地常夫氏(61歳)が557票を獲得。無所属現職の糸数健一氏(72歳)を51票差で破り当選。投票率は90・83%だった。

町長選告示前日の8月18日、与那国駐屯地前で「自衛隊に感謝」とアピールしていた糸数健一町長(当時)。(撮影/西村仁美)

 町長選は今回、2期目を目指す糸数氏に上地氏と、同じく無所属新人で元町議の田里千代基氏(67歳)が挑む三つ巴の展開となった。主に争点となったのは医療や第一次産業の充実で、「農業の振興は観光の面からも大事」(糸数氏)、「ずっとこの島に住み続けたい。豊かな島を次世代へ」(上地氏)、「与那国の自立発展には一つしかない。台湾との交通をもって交流を」(田里氏)など、それぞれに訴えた。ただ、同町で現在進んでいる自衛隊基地機能強化の是非については、三者とも主張の前面に強く押し出すことはなかった。

 政府が2010年の防衛大綱で打ち出した「南西シフト」政策に基づき、南西諸島(琉球弧)における軍事力強化が図られる中、与那国町では15年に自衛隊配備の是非を問う住民投票が行なわれ、187票差で受け入れに舵を切った。

「国防は国の専権事項」とする糸数前町長も自衛隊や基地機能の増強に異を唱えることはなく、ミサイル部隊配備なども容認、新たな港湾開発と与那国空港の機能拡充の要請とともに特定利用港湾・空港の指定などを国に求めていた。今回の町長選告示前日の8月18日には、与那国駐屯地前で日の丸を掲げ「自衛隊に感謝」と書かれたタスキをかけた糸数氏の姿が目撃された。自衛隊関係者によると、選挙期間中も連日朝夕にその姿があったそうで、筆者も駐屯地前で見かけた際に声を掛けたが「勘弁してください」と取材は断られた。住民のAさんの話によれば糸数氏は告示前にある公務員住宅を戸別訪問し「次の二期目も出ますから」と名刺を渡したほか、ポストには選挙チラシ、防衛3団体(八重山防衛協会、自衛隊八重山家族会、隊友会八重山支部)による糸数氏への推薦状、関連記事コピーが残されていたという。

失意もあらわな前町長

 公職選挙法違反の疑いも生じるこうした活動をしてまで落選した糸数氏の失意は大きかったようだ。投開票日の翌朝、役場の裏通りを登庁中、筆者に直撃されると「敗者は語らず」。それでも筆者が食い下がると「迷惑です!」と怒り、役場内へと消えた。27日に町役場で行なわれた退任式のあいさつでは、最初は近くで耳をそばだてても聞こえないほどに小さな声だったのが途中で一転。「一点の曇りも悔いもございません」と声を張り上げたものの、引き継いだ課題も多く、心残りもある様子だった。

 翌28日に登庁した上地新町長は就任式で、かつて町役場職員として働き通算で36年間の行政経験があることを示しつつ「今日からはみなさんと同じ行政マンとして仲間入りをさせていただきます。みんなで一生懸命、この島をよくしていきましょう」などと話した。

 9月5日、自衛隊と米軍が同月11日~25日に全国各地で実施の日米共同訓練に関する説明のため、沖縄防衛局職員が町役場を訪問。与那国町では「大がかりではなく、かなり規模を縮小した形の訓練」であり、駐屯地内での患者支援の衛生訓練であることを明かした。自衛隊は容認するが、これ以上の増強は「反対ではなく、慎重」との上地町長の考えが反映された形で、町長は今後も島になじむ形の防衛を求めていく方針だという。

(『週刊金曜日』2025年9月12日号)

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