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TICAD9ジェンダーイベント SRHRへの逆風の中、大臣・前大臣が支援表明

古川晶子・ライター|2025年10月14日6:30PM

 8月20日~22日、アフリカの開発を議論する国際会議である第9回アフリカ開発会議(TICAD9)が神奈川県横浜市で開催された。TICADは1993年から日本政府が主導し、3年ごとに国連や世界銀行、アフリカ連合委員会などと共同で開催する。各国首脳らが参加する全体会合のほか、各省庁やNGOなどが企画するテーマ別イベントがあり、ジェンダー課題に関するイベントも複数実施された。

国際家族計画連盟が主催したイベントの登壇者ら。右から5人目が上川陽子前外務相、6人目が阿部俊子文科相。(撮影/古川晶子)

 たとえば国際家族計画連盟(IPPF)主催の「アフリカの解決策で逆風を乗り越える:経済成長と人間の安全保障実現のカギはSRHR」では、現在、SRHR(性と生殖に関する健康と権利)支援が直面する危機を議論した。

 アフリカでのSRHR分野の支援需要は高い。医療アクセスが困難な中、DVや不本意な妊娠、児童婚による未成熟な身体の妊娠、HIV/AIDSなどの感染症、セクシュアルマイノリティへの差別など内容は多岐にわたり、いずれも生命と尊厳に関わる。

 今年7月、IPPFの事業は、大きな支援機関だった米国国際開発庁の閉鎖による資金援助停止という打撃に見舞われた。IPPFのアルバロ・ベルメホ事務局長は「現地の医療施設の多くが閉鎖され、スタッフが失職し、活用されるべき医薬品が倉庫に眠っている」と報告。困難を乗り越える新たな体制構築の必要性を強調した。

 日本にはこの困難を打開する役割が期待されている。前外務大臣の上川陽子衆議院議員は「アフリカの国々およびSRHR関連機関は国際平和のキープレイヤーであり日本の重要なパートナーだ」として、日本政府は支援のリーダーシップを担うと語った。阿部俊子文部科学大臣も「できる限り力を尽くしたい」と述べ、いずれも会場から大きな拍手を受けた。

女性の連帯で改革を

 国連人口基金のディエン・ケイタ事務局長代行は、「これまでのアフリカ支援事業で若者が職を得て社会に貢献できるようになった。この成果を後退させてはならない」と発言。日本で政策の表現に使われる「骨太」が「持続可能、芯が強い」という意味だと知り力を得たとして、「アフリカの女性のために、日本とともに骨太な取り組みを展開していきたい」と述べた。

 国際協力機構(JICA)や国連女性機関、世界銀行が主催した「WPS+イノベーション:女性や少女とともに切り拓く、新たな平和と安全保障の時代へ」では、自らの権利と尊厳が守られる社会をつくろうと取り組む女性たちが活動を報告した。ケニアのイヴォン・モセさんは食品廃棄物からバイオエタノール燃料をつくる会社を起業。経済発展が進むケニアだが、農村部の家庭では木炭や薪が主な燃料だ。モセさんの事業は「夜明け前から日没後まで重労働と煙害にみまわれている」女性の負担軽減に挑戦し、男性中心のエネルギー業界で、女性の雇用と活躍の場を創出している。

 また、女性防災リーダー養成に取り組むNPO法人イコールネット仙台の宗片恵美子常務理事は、災害時に女性の尊厳が守られるには平時のジェンダー平等への取り組みが必要だとして「世界の女性と連帯して防災力を高めていきたい」と述べた。モデレーターを務めたJICAの久保田真紀子国際協力専門員は、「自分たちが持てる力を知り、各分野で活躍する女性たちが力を合わせれば社会を変革することができる。今日はその出発点だ」とあいさつ。世界の女性たちが連帯し、ジェンダー分野の課題解決を進める熱意を共有してイベントを締めくくった。

(『週刊金曜日』2025年9月12日号)

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