神宮外苑、秩父宮ラグビー場財産処分申請を国が認可 都議らが抗議
吉永磨美・ジャーナリスト|2025年9月18日7:25PM
東京都内の明治神宮外苑再開発について独立行政法人日本スポーツ振興センター(JSC)より提出されていた、秩父宮ラグビー場と周辺の土地(約4万1200平方メートル)の財産処分申請を阿部俊子文部科学相が8月7日に認可したことに対し、東京都議会議員らが同25日に文科省に抗議した。都議らは認可の取り消しや、認可に至った意思決定の過程を明らかにするよう、要望書を提出した。

東京都などが公表している再開発計画では、樹木伐採のうえ更地化された神宮第二球場の跡地に新たな秩父宮ラグビー場を建設。現ラグビー場がある場所に新神宮球場を建てる予定となっている。
要望書を提出したのは超党派の都議39人による「神宮外苑再開発をとめ、自然と歴史・文化を守る東京都議会議員連盟」。議員数で都議全体(127人)の3割超を占める議連だ。
同要望書で都議らは、JSCが独立行政法人都市再生機構(UR)に行なわせた不動産鑑定の内容を明らかにしないまま認可したことを批判。鑑定資料と、認可に至る意思決定過程の資料の公開を求めている。
さらに、再開発計画についても「先人たちが築き、100年の歳月を経た歴史と文化を誇る神宮外苑の都市計画区域を削り、三井不動産や伊藤忠商事に超高層ビルを建てられるよう特別の配慮を行なった」と指摘。また「歴史と文化、自然を破壊するのみならず、東京都及び国のまちづくりにおける民主主義を破壊する暴挙」だと断罪している。
提出日の夕方には同省前で都議や国会議員、研究者ら約20人が横断幕を掲げつつ抗議活動を展開。集まった市民もこれに加わった。前記議連の原田あきら都議(共産)は「民間がやっていることだから文句を言えないというのは大きな間違い。JSCが持っている部分は国民全体の共有財産で、土地の処分が適正であるかを確認しなくてはならない」と訴えた。いったん抗議活動を止めた都議らは同省内へ。職員と対面で折衝のうえ計画について問いただした。
申請後1週間で認可の謎
文科省との折衝で都議らは、申請から数日間で出したという許認可手続きのあり方も追及。「7月31日の申請に対し8月7日に認可を出すとは拙速すぎる」「国民から見えないよう水面下でやった」「認可ありきで手続きをやっていた」と次々に訴えた。
この後の同省側の答弁を通じ、同省がJSCと2月から事前協議を重ねていたことが発覚。しかも再開発計画の中身について都議らが情報開示を求めていたにもかかわらず黙って手続きを進めていたことについて批判すると、同省は「調整という意味でやってきた」と説明した。
また、都議らは秩父宮ラグビー場を(競技利用以外で)イベントホールとして利用する計画について専門家などから批判が出ていることを挙げ、「国民の声を聞いていない」との抗議も。同省は「スポーツ振興の側面で、いろいろな方々にとって総合的な判断がJSCにあった」などと釈明した。
都議らは処分の条件をめぐっても疑義があるとして認可自体が不成立である可能性について指摘。「非公式の協議、議論の中身を開示すべきだ」と、不動産鑑定などを含む一連の手続きの情報開示を訴えた。これに対して同省は情報開示することを示唆した。
(『週刊金曜日』2025年9月5日号)
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