「関東大震災朝鮮人・中国人虐殺102年犠牲者追悼大会」開催 いまだ責任認めぬ日本政府を批判
薄井崇友・フォトジャーナリス|2025年9月18日6:46PM
美術家でパフォーマーのハ・ジョンナムさん(在日コリアン3世)が韓紙の紐102本を背負い会場を歩く。紐は在日同胞が背負ってきた重荷と歴史の象徴。観客が紐(重荷)を一本一本取り除いていく。そして彼女は壇上に戻り、残った重荷を振り払うかのように虐殺された人々を追悼した――。

8月31日に東京・神田駿河台の明治大学で開催された「関東大震災朝鮮人・中国人虐殺102年犠牲者追悼大会」第1部・追悼式での一幕だ。「関東大震災朝鮮人・中国人虐殺100年犠牲者追悼大会実行委員会」主催で約500人(主催者発表)が参加。関東大震災直後の虐殺から102年、いまだ果たされていない歴史的責任が果たされ、これから4世・5世の在日同胞が誇り高く生きていけるようにとの願いを込めた、参加型のパフォーマンスアートだ。
1923年の震災発生直後には6000人を超える朝鮮人、800人近い中国人が、さらには日本の社会主義者や労働運動の活動家も虐殺された。政府が発した噓やデマをもとにした官憲、警察、自警団によってだ。日本政府はこの虐殺の責任をいまだ認めない。
第1部・追悼式は黙祷で開始。田中宏さん(一橋大学名誉教授)の挨拶に続き、韓国から曺光煥、中国から周松権、邱煜峰、陳興斧の各氏が登壇。周さんは、事実を認め謝罪・補償のうえ「記念碑などで記録し、教科書で虐殺を継承するよう」にと訴えた。国会議員は杉尾秀哉(立憲)、ラサール石井(社民)、小池晃(共産)の各参議院議員と上村英明衆議院議員(れいわ)がスピーチ。全議員とも「虐殺を認めず言い逃れの答弁を繰り返している」と政府を批判し、参政党を例に「横行する排外主義」に警鐘。上村議員は「2016年に都民ファーストの会ができ日本第一党も登場。その時点で〝日本人ファースト〟が始まったのにメディアはキャンペーンしなかった。やっていたら参院選の結果が違った可能性がある」と訴えた。
第2部は山田朗・明治大学教授の「虐殺が起きた理由は大地震ではなく、帝国植民地主義にある」との指摘で開始。韓国の市民の会「独立」の朴徳真代表は同会設立の哲学と活動を解説。日本政府を批判する一方、日本の友好団体の活動と成果を高く評価した。

次いで安田浩一さん(フリージャーナリスト)が基調講演。虐殺を目撃した俳優・伴淳三郎や作家・佐多稲子の証言などを挙げて事実に迫ったほか、大震災と関係なく起きた多くの虐殺事件を解説。山田教授の指摘を裏付けた。また、現在起きているクルド人へのヘイトスピーチ・排外主義の取材例から「102年前の雰囲気と今が類似する」と危機感を示しながら「殺さないために、殺されないために、殺させないために、私たちは記憶を繋ぐ。そして社会を変えよう!」と述べた。最後は主催者・藤田高景事務局長の呼びかけで集合写真を撮り「エイ・エイ・オー!」の掛け声で来年の開催を誓った。
(『週刊金曜日』2025年9月5日号)
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