シンポジウム『司法が原発を止める』 原発を止めた元裁判官が国策に従う判決を批判
脱原発弁護団全国連絡会|2025年9月11日7:32PM
『司法が原発を止める』(旬報社)の出版記念シンポジウムが7月24日、約200人が参加して東京・連合会館であり、筆者の井戸謙一弁護士と樋口英明元裁判長が登壇した。

同書は、裁判長として2006年3月24日に金沢地裁で志賀原発の運転差止めを命じた井戸弁護士と、14年5月21日に大飯原発運転差止め、15年4月14日に高浜原発の仮の差止めを命じた樋口元裁判長の対談。それぞれの判決を言い渡した二人の思いや、そもそも法曹を目指したきっかけ、刑事事件の判決の思い出などを語りつくしている。
井戸さんは、裁判官時代のことを書きたいと思っていたが、執筆する時間が取れない中、対談によって実現したと述懐。この本が好評なのは、原発関連訴訟で、国策に従った判決が続く司法を憂いている方が多いためだと思うと述べた。国策には対抗できないという感覚が裁判官を支配しているのではないかと危惧。新人のころの研修で最高裁判例に従えという教育を思い出したという。2022年6月17日の福島第一原発事故の避難者の国家賠償請求訴訟の最高裁判決は非常にお粗末な内容だったとして、「下級審では国の責任を認める判決が多かったのに、最高裁判決以降は押しなべて国の責任を否定している。最高裁判決の内容がお粗末だと認識していても、最高裁判決が出たら思考停止してしまうようでは憲法が期待する、憲法と法律にのみ拘束される裁判官ではない。裁判官は駒ではないのであって、裁判を裁判所から裁判官に取り戻さなければならない、個人として全身全霊をかけて判決し、その責任は個人にあるので覚悟は持たなければならないが、それこそが裁判官のやりがいなのだ。若い現場の裁判官にこそ読んでほしい」と呼びかけた。
樋口さんは、福島第一原発事故の前にあの差止め判決を出すのは難しかったと想像する、自分が出せたのは、福島第一原発事故で、原発の本質を知ったからだ、と述べた。すなわち、原子炉は電気と水で冷やし続けなければ暴走すること、暴走した時の被害は甚大で、福島第一原発事故では単に停電しただけで東日本が壊滅しかけたのである。福島第一原発事故によって原発の本質が明らかになったのに、なぜ原発の差止めを認める判決が出せないのかが不思議だと指摘。原発訴訟は難しいという先入観を裁判官も持っているが、大飯原発差止訴訟で関西電力は「この敷地に限っては大きな地震は来ません」と主張していた。この主張が信用できるかどうかが原発差止訴訟の本質だと述べた。『司法が原発を止める』とは、最高裁で勝つということ。最高裁で勝つためには、みなさんが原発の本質と危険性を理解されて脱原発を国民世論にしなければならないと述べた。
脱原発弁護団全国連絡会の共同代表でもある河合弘之弁護士が会場から発言。「裁判官は選挙で選ばれていないことへのコンプレックスから、国策に反する判断をためらうが、根本的に間違っている。民主主義は時に誤りを犯すから、民意で選ばれていない裁判官、学者等による歯止めがきちんと働くのが重要で、裁判官は法と論理に基づき判断することが大事である。自分も二人と共に訴えていく」と述べた。
(『週刊金曜日』2025年8月29日号)







