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老朽美浜原発3号機、仮処分即時抗告審終結 年内に裁判所が判断

脱原発弁護団全国連絡会|2025年8月7日3:29PM

 運転開始から来年で50年の老朽原発として稼働中の関西電力美浜原発3号機運転差止仮処分の即時抗告審の審理が7月11日、名古屋高裁金沢支部で終結した。審尋期日(非公開)後に、報告集会が開かれた。

7月11日、入廷行進する抗告人ら。(写真/脱原発弁護団全国連絡会)

 冒頭に、弁護団共同代表の井戸謙一弁護士は、「今日は審尋期日としては最後と言われていたので、言いたいことは出し尽くそうと9通の準備書面を提出した。内容は、立証責任論、老朽化問題、地震動、避難計画等であり、多岐にわたって主張の補充をした。関電からも4通の書面が出ている。本日の期日では、抗告人側が①老朽原発の問題点、減肉事故の深刻さ、②新規制基準の基準地震動の定めの不合理、③近時の差止請求棄却判決の不当性、ばらつき問題、震源ごく近傍地震動、立証責任論、④避難計画について併せて50分くらいプレゼンをした。地震の問題や、最近の国際情勢からも原発事故のリスクは高まっているのに、福島第一原発事故がだんだん忘れられ、政府の方針転換で原発を積極的に使おうという社会的風潮が強まっているなか、原発を止められるのは司法しかないと裁判官の自覚を促し、覚悟を持って判断をしてくださいというプレゼンが続いた。それを裁判官がどう受け止めたのかわからないが、受け止めて決定に反映されることを期待したい」と述べた。

 藤川誠二弁護士は、老朽化の具体例として、主に去年10月の配管減肉事故を取り上げた。減肉(配管の内側が削られて薄くなること)は根本的に防ぎようのない問題で、12.5センチ、直径60センチの炭素銅製という鋼鉄の配管がわずか10カ月半のうちに貫通してしまうほどの減肉が起きた。原発には総延長170キロくらい配管が張り巡らされており(100万kw級、BWRとPWRの平均)、老朽原発では、どこでも減肉が生じていると考えられる。減肉が進行していた場合に地震があったら被害はどうなるのか。関電の反論は法令やガイドをなぞるような抽象的な主張立証で、安全性確保からは程遠い。老朽原発の評価について、裁判所がどういう判断基準を示すのか注目してもらいたい、と述べた。

 北村賢二郎弁護士は、「強震動学は将来原発に到来する最大の地震動を予知予測することはできないし、実際、基準地震動を超える地震が6件あったことから、原発の耐震性の要となる基準地震動を強振動予測で決めるのは不合理であること。また、美浜原発の基準地震動は993ガルであるところ、900や1000ガルは、頻繁に観測される地震動であり、基準地震動が著しく低いと指摘。樋口英明元裁判官が福井地裁で大飯原発の運転差し止めを命じた判決は名古屋高裁金沢支部で取り消されたが、高裁でも地震が予知予測できないことは認定されている。裁判所の役割は、住民の生命と生活を守ることであって、原発政策維持の観点が入ってはいけない、人権の砦としての観点から判断してくれと裁判長に説明した」と述べた。

 避難計画の問題について、大河陽子弁護士は、「関電は事故に至る機序を主張立証すべきと主張するが、どこが壊れて放射性物質が拡散するかなどは事前に特定することは困難であるし、そもそも自然現象は予測できない。自然現象が予測できることを前提とする関電の主張は、科学的知見からかけ離れであると指摘。第1~4の防護階層の不備欠落の有無にかかわらず、第5の防護階層の不備欠落だけで具体的危険は認められると主張立証を十分重ねた、能登半島地震を踏まえた主張についても、地元なので裁判官に実感を持って理解してもらいたい」と述べた。

 最後に井戸弁護士が、立証責任論に関する関電の反論部分の問題点を指摘した。①関電は原発の運転を「関電が本来行使できる権利、自由」である。②抗告人らを被害者とみなして、立証責任の転換をすべきではないとの主張をした。①について、原発の設置は許可制であること、すなわち原則的に禁止されており、規制委員会が許可した場合だけ例外的に運転が認められている法律の仕組みを見逃している、②について、原発事故の可能性が否定できない以上、抗告人らは潜在的被害者であり、事故が起こらなくても事故の危険におびえて生活しなければらないことだけでも被害者である。関電は、今までこのような主張はしていなかった。ここにきて傲慢で攻撃的な姿勢をあらわにしてきている。この姿勢の変化は注意しなければならないと述べた。

 裁判長は、決定を出す時期は明言せず、できるだけ早く、年内には出したいと述べるにとどまった。

(『週刊金曜日』2025年7月25日号)

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