〈あなたのことを大事にします〉想田和弘
想田和弘・『週刊金曜日』編集委員|2025年8月7日3:19PM

この原稿を書いている時点で参議院選挙の結果は出ていないが、参政党が躍進しそうである。
彼らが掲げる「日本人ファースト」というコピーが、大勢の日本人の心を動かしているのは間違いない。排外主義的な感情を喚起する政党が伸びる現象は、米国やヨーロッパで極右勢力が台頭し、中道勢力が力を失い、デモクラシーが弱体化していく図とかぶる。憂慮すべき傾向である。
しかし支持する人たちを非難したり嘆いたりしても、事態は好転しないだろう。むしろ「外国人よりも自分たち日本人を優先してほしい」と思う人々がどんな状況にあり、どんな感情が渦巻いているのか、正面から受け止め考える必要がある。
まず、日本社会で十分に守られ、大事にされていると感じている人には、「日本人ファースト」はたぶん響かない。
逆に言うと、「日本人ファースト」が響く人々の生活は、おそらく苦しい。不安定な雇用、低賃金、長時間労働、重い税負担に加えて、物価高。自分が守られ、優先され、大事にされているとは感じていない。そして本来は自分に回るべきリソースやケアが、外国人によって奪われていると感じているのだろう。米国で言えば、かつて自動車産業などで栄えたラストベルトで暮らし、ドナルド・トランプに希望を託した人々と同様である。
もちろん彼らからリソースやケアを奪っているのは、外国人ではない。円安で押し寄せるインバウンド観光客や、少子化による人手不足の現場で低賃金で働く外国人労働者たちは、日本経済を支えこそすれ、私たちから何かを奪う存在ではない。彼らはいわば苦境を説明するためのスケープゴートにさせられているだけだ。
しかし重要なのは、「この国で自分は大事にされていない」という感覚を抱いている人が、大勢いるということである。彼らは「日本人ファースト」というコピーを「あなたのことを大事にします」というメッセージとして受け取ったのではないだろうか。
つまり既成の政党が排外主義的な政党に対抗するために必要なのは、排外主義に迎合することではない。そうではなくて、厳しい暮らしを強いられている人々に対して、「あなたのことを大事にします」というメッセージを発し、彼らを守るための政策を打ち出し、本気で実行する必要がある。既成の政治が人々の支持を回復したいなら、それ以外に方策はないと思う。
(『週刊金曜日』2025年7月25日号)







