参政党さや氏の発言「核武装は安上がり」は本当なのか
半田滋・防衛ジャーナリスト|2025年8月6日6:31PM
参院選挙で議席数を大きく伸ばした参政党。その主張は極論が目立った。東京選挙区で初当選した同党公認のさや氏は公示日に放送されたネット番組で「核武装が安上がり」と述べた。
司会者が核保有や日米同盟について質問したところ、さや氏は「核武装が最も安上がりであり、最も安全を強化する策の一つだ」と答えた。同党代表の神谷宗幣氏は公示中、「核武装は検討すべきだ。議論は避けてはいけない」と主張。核武装を視野に入れた国政政党が現れたことになる。

さや氏が言うように本当に「核武装が安上がり」なのか。
日本には核兵器を「持たず、作らず、持ち込ませず」を定めた非核三原則があり、核兵器を保有するには、まずこの国是を変更する必要がある。それだけではない。「原子力利用は平和の目的に限る」とした原子力基本法があり、法改正が求められる。
戦争で唯一の被爆国である日本の世論を逆方向へ進ませるのは容易ではない。相当な時間と労力を要する。
「安上がり」発言の背景に、政府が「敵基地攻撃能力の保有」を決め、毎年、1兆円前後を投じる長射程ミサイル導入費の削減があるのだろうか。「核保有=通常兵器の削減」を期待しても核兵器の開発そのものに莫大な費用がかかり、防衛費は上昇しかねない。
核保有を決定して次に向き合うのは、核拡散防止条約(NPT)からの脱退である。北朝鮮はNPT脱退を表明して核開発を進めた結果、国連から経済制裁を科され、後ろ楯の中国から燃料や食糧の支援を受ける。日本が脱退を表明すれば、「核の傘」と引き換えに日本を言いなりにする米国が制裁する側に回るのは確実だろう。
資源に乏しい日本の食料自給率は38%に過ぎず、それも種子や肥料を輸入しかろうじて保っている数字だ。石油備蓄は約240日分あるが、使い切った翌日から国内流通や石油火力発電は止まる。
それでも石にかじりついて核開発を進めるとする。不可欠な核実験はどうするのか。北朝鮮のように山間部の地下核実験に踏み切るとすればどこを選ぶのか、巨大地震の呼び水にならないか、検討すべき項目は多い。
核兵器はどこに置くのか。配備が決まった自衛隊基地の周辺住民が歓迎するとは到底、思えない。日本同様、国土の狭い英国は保有する核兵器を原子力潜水艦から発射する核ミサイルにしている。日本が新たに原潜を持ち、配備する基地を決めるまでの政治的、物理的なコストは計り知れない。
政治家の言葉は本来、深謀遠慮の結果、生み出されるべきだ。しかし、事実を歪曲し、歪曲どころか発言の根拠となる事実さえ知らない政治家の「言ったもの勝ち」の世界。政治家の劣化は、有権者の劣化の裏返しかもしれない。
(『週刊金曜日』2025年8月1日号)







