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〈子どもたちへ〉崔善愛

崔善愛・『週刊金曜日』編集委員|2025年8月6日5:47PM

崔善愛・『週刊金曜日』編集委員。

 今回の参議院選挙。毎日のように「日本人ファースト」を耳にした。そのたびに「自分は日本人ではない」ことを自覚させられた。「ここは日本。あなたはなぜここに居続けるのか?」と言われているようで苦しくなった。NHKテレビの政見放送で、ある候補者が特定の外国人を「クズ」と呼んだ。胸が苦しくなりテレビを消した。

 そんな日に、自宅ポストに「日本人ファースト 参政党」と大きく書いたちらしが入っていた。自分の韓国名を表札に出しているが大丈夫だろうか、ともかく早く選挙が終わってほしい、こんな虐待のような時間ははやく過ぎ去ってほしい。そう思ったが、選挙結果を見てこれは「始まり」なのだとわかった。これから何が起こるのか、とくに子どもたちへの影響が心配だ。

 わたしのアイデンティティは日本に根差している。ここで生まれ育ったわたしにとって日本は、外国でも他国でもない。しかし、どんなにここが故郷だと言おうと、法的には「外国人」扱いだ。国籍とは、なんと残酷な代物だろう。

 投開票の7月20日、講演のため大阪の枚方市にいた。終了後、同世代の女性がこんな体験を話した。「学生時代、3人の友人から『じつは自分には本名がある』と告白され、日本人ではなく韓国人だと知らされたのですが、3人はそれぞれ別々のタイミングだったのに、3人とも同じ言葉を言ったんです。『それでもわたしのこと、嫌いにならんといて』と。ショックでした」。

 同様のエピソードをわたしはこれまで何度、聞いてきたことか。

 1年ほど前のことだが、自宅前を小学校高学年の男の子が3人で下校していた。

「お前、日本人じゃないだろう。なんで俺たちと一緒に帰ろうとするんだ、あっち行け」。言われた子は、無言のまま来た道を戻り始めた。すると残る2人のうちの1人が「じつは僕も中国人なんだ」。すると「うそだろ。ほんとか。見た目じゃわからないな」と。わたしは独り外れて道を戻った子どもを追いかけたが、見失ってしまった。いま、彼はどうしているだろう。

「日本人ファースト」の嵐が吹く今このとき、ルーツを知られると嫌われる、いじめられる、とおびえる子どもたちがいる。だからわたしは韓国名の表札を出しておこう。日本人ではなくても、ここに住んでいる人がいるということを子どもたちに知らせるために。

(『週刊金曜日』2025年8月1日号)

定期講読はこちら。https://www.kinyobi.co.jp/digitalkinyobi/

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