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福島・甲状腺がん多発調査、「原発事故との関係」再否定で迷走

林衛・富山大学准教授/本田雅和・編集部|2025年8月6日6:00PM


 2011年の東京電力福島第一原発事故の1年後から続く小児甲状腺がんの多発問題で、福島県が進める「県民健康調査」検討委員会(医師、大学教員、環境省幹部ら18人)が7月25日に開催され、甲状腺検査評価部会の新たな「部会まとめ」が報告された。鈴木元・部会長らは「放射線の影響は考えにくい」との15年の「中間とりまとめ」や、原発事故との関連をさらに強く否定した19年以降の結論を追認した。

鈴木元・甲状腺検査評価部会長(前列右端)と重富秀一・県民健康調査検討委員会座長(同左端)。福島市内で。(撮影/林衛)

 今回の「まとめ」では「症例対照研究による解析」の結果、放射線量が増えればがんが増えるとの「一貫した量・反応関係」は認められないなどとして「放射線(即ち原発事故)とは無関係」との傾向は「より明確になった」とした。

 が、このまとめに対し、検討委座長の重富秀一・双葉郡医師会副会長は「承認・非承認はしない」と責任回避の姿勢を貫いた。検討委の中からも「放射線の影響がないなら検査はすでに役割を終えている」「委員たちが同意する『まとめ』をなぜ『承認』する手続きを採らないのか?」などの疑義が出た。重富氏自身が当初は討論・議論の歓迎を表明していたが、会議終了後の記者会見では、県職員が一方的に決めた「1人1問」などの強引な〝ルール〟で記者の質問を途中で遮るなどの司会を追認し、「会場と時間の都合」を理由に記者らの質疑を打ち切った。

根拠データ公開要求拒む

 対話否定の路線に対しては、本行忠志・大阪大学名誉教授(放射線生物学)や濱岡豊・慶應義塾大学教授(応用統計学)らが連名で福島県などに質問状を提出。がんと放射線の関係を否定する「根拠となる検証可能なデータ」を情報公開するよう求めてきた。

「甲状腺被ばくの真相を明らかにする会」(代表=藤岡毅・大阪経済法科大学客員教授)が7月14日に出した要請文では①まとめの根拠となる推定値は鈴木部会長の論文(22年)によると鈴木氏自ら認めたが、同論文はJAEA(日本原子力研究開発機構)の寺田宏明氏ら論文(20年)の大気拡散シミュレーションに全面的に依拠。原発事故直後の福島市・郡山市など中通り地区を最大の放射性雲(プルーム)が通過した事実を無視し、中通りの線量を極端に過小評価②鈴木氏は原発事故直後の避難民1080人の被曝検査データと推定値が一致と主張するが、甲状腺の測定値から肩周辺の汚染衣服の測定値をバックグラウンド線量として差し引くマニュアル違反で半数以上がゼロまたはマイナス値で無効な測定③ヒト対象の疾病の因果関係の科学的判断では病因物質の特定は必要条件ではなく、曝露集団と非曝露集団の比較で十分なことは疫学の基礎常識。数十倍のがん発生が認められた時点で、津田敏秀・岡山大学教授論文で「原発事故原因」は明らかにされ、これを支持したISEE(国際環境疫学会)は日本政府と福島県に調査の協力を申し出たが、政府・県は無視している――などの事実を示し、外部科学者を交えた討論の場を求めているが、これらも無視されたままだ。

 14年前の原発事故では大量の放射性ヨウ素がばらまかれた。一定の大きさ以上に生長した小児甲状腺がんの多発は大量のヨウ素放出以外では起こらず、「過剰診断」ですべての症例は説明できない。評価部会に提出された症例対照研究では、県全体でも明らかな線量・効果関係が示されているのに対話拒否は科学の否定だ。

(『週刊金曜日』2025年8月1日号)

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