考えるタネがここにある

週刊金曜日オンライン

  • YouTube
  • Twitter
  • Facebook

【タグ】

原告敗訴が続く大嘗祭訴訟、「天皇の宗教」問う司法判断の行方は

平野次郎・フリーライター|2025年7月29日2:56PM


「令和」の皇位継承に伴う大嘗祭の儀式をめぐり憲法の政教分離規定に違反すると訴える裁判で、2025年は2月に東京高裁で、同4月に大阪高裁でそれぞれ原告側の控訴を棄却する判決があった。一方、1月に韓国人靖国神社合祀訴訟で最高裁は上告を棄却したが、判決中の反対意見で「国の行為が憲法に違反した疑いについて検討が尽くされていない」と指摘。大嘗祭訴訟の原告らは、敗訴が続く中でこの最高裁反対意見に希望を見いだし、いずれも上告した。

6月27日、政教分離訴訟全国交流集会で今後の裁判の課題について話し合う参加者たち。(撮影/平野次郎)

 6月27日と28日に京都市内で開かれた第37回政教分離訴訟全国交流集会では、これら三つの判決について各弁護団の弁護士がそれぞれ判決結果と問題点を報告し、約60人の参加者らが今後の裁判闘争の課題を話し合った。

 2月の東京高裁判決(谷口園恵裁判長)は、即位の礼や大嘗祭への国費の支出は政教分離規定に違反し信教の自由を侵害されたとして原告らが国に損害賠償を求めた訴訟。この判決について報告者の弁護士は「政教分離規定に反する国の行為がなされたとしても、私人の信教の自由を直接侵害することがない限りは当然に違法と評価されるものではない」として政教分離違反について判断しなかった東京地裁判決(24年1月)をそのまま是認したものだと批判した。

 4月の大阪高裁判決(東亜由美裁判長)は、大嘗祭で供える新米を収穫する「主基田抜穂の儀」や「大嘗宮の儀」などの儀式に京都府の西脇隆俊知事らが公費で参列したのは政教分離規定に反するとして、西脇知事に公金返還を求めた住民訴訟。原告らは「新天皇が新穀を天照大神と共食することで神になるという天皇の宗教儀式への参列は政教分離規定に違反すると訴えたが、京都地裁判決(24年2月)は、天皇即位の伝統儀式への参列は社会的儀礼を尽くすという世俗的なものであり、政教分離規定に反しないと判断(本誌24年3月1日号既報)。大嘗祭の儀式は「天皇の宗教」という原告側の主張について、高裁判決は「儀式のもつ意味や位置づけは時代とともに様々に変化するものであり、控訴人らの主張は今日の社会において一般的であるとは認められない」として切り捨てた。

説得力持つ「三浦意見」

 他方で1月の最高裁判決は、旧日本軍に所属して戦死した韓国人遺族らが、国が靖国神社に提供した戦没者名簿をもとに父親らが合祀され人格権を侵害されたとして国を訴えた訴訟。第二小法廷(岡村和美裁判長)は原告の父親らが合祀されてから提訴するまでに20年以上経過しているとして、被害発生から20年を過ぎると賠償請求権が消滅するとした旧民法の除斥期間を適用して遺族らの上告を棄却。国の名簿提供は政教分離規定違反だとする原告側の訴えを認めなかった。

 判決は裁判官4人のうち3人の多数意見だが、三浦守裁判官は反対意見として「国の直接的な合祀協力は、政教分離制度の中心に位置する問題」と指摘し、国の行為が政教分離違反かどうか検討が尽くされなかったとして審理を高裁に戻すべきだと述べた。

 三浦意見について、報告者の弁護士は「法的、歴史的、正義・公平などの観点から非常に説得力があるものだ。今後の政教分離訴訟を闘う上で先例になりうる」と評価。別の弁護士は「憲法の重要な原則に違反する国の行為の違憲性を問う裁判は国民に閉ざされるべきではない」と主張した。

(『週刊金曜日』2025年7月25日号)

【タグ】

●この記事をシェアする

  • facebook
  • twitter
  • Hatena
  • google+
  • Line

電子版をアプリで読む

  • Download on the App Store
  • Google Playで手に入れよう

金曜日ちゃんねる

おすすめ書籍

書影

増補版 ひとめでわかる のんではいけない薬大事典

浜 六郎

発売日:2024/05/17

定価:2500円+税

書影

エシカルに暮らすための12条 地球市民として生きる知恵

古沢広祐(ふるさわ・こうゆう)

発売日:2019/07/29

上へ