〈参政党とナチス・エコロジズム〉田中優子
田中優子・『週刊金曜日』編集委員|2025年7月18日6:41PM

SNSがフェイク情報を山のように出す今日、私たちが心しなければならないのは「騙される」ことだ。『週刊金曜日』の読者は、簡単には騙されないとは思うが、オーガニックとか、有機農法はどうだろう?「買ってはいけない」を発信し続けた媒体だ。もしかしたら、と懸念するのが、「オーガニック」や「エコロジー」を前面に出す政党について、「いいかも」と思いかねないことである。
そこで20年前に刊行された藤原辰史著『ナチス・ドイツの有機農業 「自然との共生」が生んだ「民族の絶滅」』(柏書房)を紹介したい。ここではバイオダイナミック農法をまず取り上げている。これは土壌、植物、動物の相互作用および、天体の作用を農作物の生育に生かすことを目指す農法で、神智学に基づきシュタイナーが提唱したものだ。
江戸時代に発展した「本草学」でも天体の作用が問題にされ、たとえば満月の夜の池の水はそれ以外の時の水とは異なる作用を持つ等々言われた。しかし古代中国のそういう説を農民たちが気にした形跡はない。現実の農民は実際的で効率重視なのだ。近代の農業従事者もそのはずなのだが、戦前のドイツでは、古代ゲルマンのドイツ農民は「貴族」であり純粋なアーリア人種の血をもっているからそれを守らなくては、というストーリーが作られた。その果てに除草の対象を草ばかりでなく人間にも適用させたのである。
強制収容所には、囚人を家畜とし農地を屠場とする「植物の育成」と「人間の殺害」の複合農業施設が存在したという。人間の骨を肥料にも使った。大量虐殺隠蔽のための隠れ蓑を菜園、堆肥置き場、農場が提供していた。エコロジーと民族主義という組み合わせは昔からあったということだ。
参政党の憲法案には「国民の幸せを祈る神聖な存在」である天皇が、この国を「しらす」としている。「しらす」とは「統治なさる」という意味だ。これを日本の「國體」としており、国民主権や基本的人権という言葉は一切出てこない。
今や「農業の復興」は全ての政党が言っている。米の生産に必要なのは「國體」ではなく補助金や農家の持続的な収入だ。「日本人ファースト」と言い、観光客も含めて外国人の入国を制限するという。これは国民の困難を外国人のせいにする「逃げの政治」だ。しかし米国とは仲良くするそうだ。訳がわからない。とにかくオーガニックは「誰がそれを言っているか」に注視しないと、とんでもない思想に巻き込まれる。
(『週刊金曜日』2025年7月11日号)







