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「103万円の壁」問題は額じゃない 扶養を前提とした「壁」自体が女性の自立を阻む

山田道子・ライター(2025年5月2日・9日合併号)|2025年7月8日11:55AM

 所得税の支払いが生じる年収の最低ライン「壁」が103万円から160万円に引き上げられた。これに対し、「『生活が苦しいから税金下げろ』でいいのか?」と、女性を低賃金労働にとどめてきた「壁」自体を問い直す集会が4月22日、東京・永田町で開かれ、専門家らが異議を唱えた。主催はNPO法人アジア女性資料センター。

 103万円の扶養控除引き上げと同時に、働く学生の親の税負担を軽減する「特定扶養控除」も、子どもの年収要件が103万円から150万円に引き上げられた。

 ジャーナリストの竹信三恵子さんは、2024年の総選挙で「『103万円の壁』を引き上げ『手取り』を増やす」と訴えた国民民主党が躍進した背景を分析。「税や社会保険料の増加で賃金は増えないのに物価は上昇する。『払い疲れ』の働き盛りの中間層男性を中心に共感を呼んだ」と話した。そして、「共感できる部分もある」としながらも、「税収減を理由に介護や子育てなど福祉予算が一段と抑制されることが懸念される。今以上に縮減されれば、育児や介護を担っている女性は自立して働けなくなる」と警告した。

 

 また、「壁引き上げ」で妻の「働き控え」が減る効果はないという。「『年収の壁』を基準に配偶者手当を支給する企業は5割以上。社会保険料の支払いが生じる『130万円の壁』はなくなっていない。『壁引き上げ』は、妻を扶養する中流サラリーマンにお得感がある。『壁』の内側の女性を増やすことになりかねない」として、税金の取り方や使い道など総合的政策の必要性を強調した。

 どのような税制が望ましいのか。北明美・福井県立大学名誉教授は、税と社会保障のあり方についてフランス、ドイツ、スウェーデンと比較。「日本の特徴は、社会保険料の負担が企業より労働者の方が大きいこと、低所得者の方が負担が重いこと」とし、これを正し、社会保障に消費税以外の税金を投入することを求めた。

国や企業のための制度

「壁引き上げ」に関しては「扶養してくれる夫や親がいない人には何の恩恵もない。必要なのは世帯主の手取り増ではなく、直接的な現金やサービスの給付ではないか。世帯主か否か、正規か非正規かに左右されない同一価値労働同一賃金の原則の確立が必要だ」と指摘。玉木雄一郎・国民民主党代表が引き上げ理由にあげた「生存権の保障」は、「手取りを増やすだけでなく、社会保障とのセットで考えるべきものだ」と述べた。

「働く学生の年収要件引き上げは、社会保障を薄くし自分で働いて担えという自己責任論に向かう。不十分な社会保障から目をそらさせるもの」と憤るのは、お茶の水女子大学の大学院生で、学費値上げ反対緊急アクションを展開する唐井梓さん。アルバイトの掛け持ちで学業に専念できなかったり、メンタルヘルスを壊したりする学生の実態を詳述。「特に影響を受けるのは女性、若者、障がい者、外国籍の人ら経済的に不安定な人。親や配偶者に扶養されることを前提にした制度から、すべての個人が自立し、支援が必要な時には社会が支える『平等』の実現が求められている」と強調した。

 能條桃子さんは、若者の政治参加を促進し、20~30代の女性地方議員増を目指す活動をする。「若者は、『103万円の壁』議論を歓迎し、貯蓄に励むなど自己責任を内在化している」「女性がパートで働き育児や介護を無償で担うことは国や企業にとってありがたいしくみ。政治が男女不平等を作り出している」と指摘。これらを生み出した政治を変えなければならないと訴えた。

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