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「飯塚事件」再審求める地元市民らが現地調査実施 さらに高まる確定判決への疑問

粟野仁雄・ジャーナリスト|2025年6月23日6:57PM

 1992年2月に福岡県飯塚市で登校中の小学1年生女児2人が殺され、裁判では無罪を主張していた久間三千年さんの死刑が確定(2008年に執行)した「飯塚事件」についての「現地調査」が4月5日・6日に行なわれた。

「飯塚事件」被害女児2人が最後に目撃されたという三叉路で現地調査にあたる参加者。(撮影/粟野仁雄)

 調査を主催したのは「飯塚事件の再審をもとめる福岡の会」「日本国民救援会福岡県本部」の2団体。初日は飯塚市内で集合後に30キロほど離れた、事件当時女児2人の遺体が発見された古処山の八丁峠の現場へ。雑木林に置かれた地蔵に手を合わせた。案内役を務めた前記「福岡の会」の清水信之さんが「こんな見つかりやすいところに捨てますか」と不思議がった。現場から少し坂を上がったところにランドセルや着衣が捨てられていたが「並ぶように置かれていたのも不自然。他に見つかりにくい場所はいくらでもあったのに」と当時の状況を説明した。

 裁判では現場付近で不審な車と男を見たとする森林組合員のT氏が「(男は)右後ろを見ながら運転し、車はダブルタイヤだった」などと証言。久間さんが当時所有していたワゴン車もダブルタイヤだったが、清水さんは「すぐ次のカーブがある場所で、後ろなどをゆっくり見ていられない」。参加者も軽四に乗車しつつ付近の状況を確認したが、前記T氏が裁判で証言したような、タイヤや服装を細かく思い出せる目撃などできるはずがないと感じる場所だった。

 2日目は女児2人が最後に目撃されたという飯塚市「潤野三叉路」での検証が行なわれた。ここでも「車はダブルタイヤだった」との、前出とは別の目撃者による証言があったが、そもそも別の2カ所で、なおかつどちらもきわめて短時間に目撃したうえでそのような証言ができるものなのか。「不審な車だと思えばタイヤではなくナンバープレートを見るのが自然では」と、大分県日田市から参加の秋田勝博さんは語っていた。「判決文を読んでおかしいと感じ興味を持った」として東京から参加した若いH・Y子さんも「どうして不審に思ったTさんがすぐに通報しなかったのかが一番不自然ですね」などと話した。

第2次再審請求は高裁へ

 事件をめぐっては久間さんへの死刑執行後、二度にわたる再審請求が行なわれている。第2次請求では事件の報道を見て名乗り出た古賀市の木村さん(今回の現地調査でも懇親会に参加)が「事件の日、八木山バイパスで午前11時ごろ軽自動車に乗せられ、ランドセルを背負った女児が恨めしそうな(不安そうな)顔をしていたのを見た」と証言した。この証言に基づけば被害者の死亡推定時刻が午前9時30分までとする確定判決と矛盾する。他にも再審請求審では女児の最後の目撃者とされていた女性が「実は目撃していませんでした」と従来の証言を覆している。

 確定判決では「本件において被告人と犯行との結び付きを証明する直接証明はせず、情況証拠によって証明することのできる個々の情況事実は、そのどれを検討してみても、単独では被告人を犯人と断定することができない」としながら裁判所が苦しい有罪論を展開していた「飯塚事件」だが、再審で無罪を獲得した袴田巖さん(89歳)の例とは異なり「死刑が執行された事件の再審が認められるわけがない」との諦観もある。久間さんの妻による第2次再審請求は昨年6月に福岡地裁で請求棄却されたが、弁護側が福岡高裁に即時抗告した。動向を注視したい。

(『週刊金曜日』2025年4月18日号)

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