考えるタネがここにある

週刊金曜日オンライン

  • YouTube
  • Twitter
  • Facebook

,

【タグ】

「偉人」の過去の不正義にどう向き合ったか〈上〉 性被害を告発した郡司真子さんインタビュー 

聞き手・まとめ/室田康子|2024年11月29日3:59PM

言えるまでに27年

――2020年にネット上の「note」やツイッター(現「X」)で自身の性被害を告白しました。

 そのころ、フリースクール東京シューレで起きた性暴力の被害者を支援したり、性暴力に抗議するフラワーデモに参加したりして、私も被害者だと気づいたのです。それまでは、あんなことがあったのは自分にスキがあったからだ、嫌なのに関係を続けてしまったのは自分が弱かったからだと思っていました。でも悪いのは加害者で自分は悪くなかったと気づいた。自分に起きたことを言えるようになるまで27年かかりました。

――同年3月に長崎であったフラワーデモで、警察幹部から受けた性暴力を訴えました。

 私の被害のことを知った新聞労連(日本新聞労働組合連合)の人から話をしてほしいと言われたのです。私の被害は、取材の現場で起きました。長崎文化放送は朝日新聞社や長崎新聞社と資本関係があり、私が勤務していた当時の部長やキャップ(指導的な立場の記者)も両新聞社から出向してきていました。彼らは私を助けてくれませんでした。何としてでもネタを取ってこいという文化の中で、女性の人権など無視されてきた。私が声をあげていたら、長崎市の部長から性暴力を受けて提訴した女性記者(22年に勝訴)のように後輩たちが傷つくことはなかったのではないか。そう考えて長崎に行ったのです。あの後、スピーチで名前を挙げた先輩男性から「自分は被害の実態を知らなかった。名前や新聞社名を出さないように」という手紙が来ました。

 フラワーデモで、私は性被害に遭ってすごくつらかったと話してからやっと、あの警察幹部に会う夢を見なくなりました。以前は、怖くて「あーっ」と叫びながら目覚めることが何度もあったのです。

時効の壁に阻まれて

――そして、同じ年の7月に岡正治の性加害を告発しました。

 やっと言えるようになった。でも3年近く何の反応もなかったので、23年になって岡まさはる記念長崎平和資料館(当時)の会員である乗松聡子さんから連絡をもらったときはとても驚きました。わかってくれる人がいた、自分はなかったことにされなかった、と思いました。資料館が私に謝罪し、きちんとした対応を取ったことは画期的です。

――それに比べて、長崎県警は何の対応もしていません。取材を申し込みましたが、「事実かどうかも含めてコメントできない」という返事でした。

 私の被害は時効で裁判を起こすことはできませんが、道義的責任はあると思います。個人的には、あの警察幹部に会って「あれは同意ではなかった。性暴力だった」と伝えたい。

――今は性暴力をなくすための活動を精力的にしています。

 発達支援が必要な女の子たちが性被害に遭うことが多く、それを防ぐ運動や法整備の働きかけをしています。踏みにじられた私の尊厳はまだ回復していませんが、性暴力防止の活動が自己治療の一環にもなっています。

(『週刊金曜日』2024年11月22日号)

【タグ】

●この記事をシェアする

  • facebook
  • twitter
  • Hatena
  • google+
  • Line

電子版をアプリで読む

  • Download on the App Store
  • Google Playで手に入れよう

金曜日ちゃんねる

おすすめ書籍

書影

増補版 ひとめでわかる のんではいけない薬大事典

浜 六郎

発売日:2024/05/17

定価:2500円+税

書影

エシカルに暮らすための12条 地球市民として生きる知恵

古沢広祐(ふるさわ・こうゆう)

発売日:2019/07/29

上へ